わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

女子ワールドカップ雑感3

トーナメント1回戦のAブロックが終わった女子ワールドカップ。Aブロックはスペイン・オランダ・日本・スウェーデンが駒を進める結果となった。
雑感の第3弾はBブロックを待たず急遽書き下ろします。ベスト16の半分、Aブロック感慨を書く!




◉日本 vs ノルウェー

男子のカタール大会から流行を引き継ぐかのように「54ブロック」全盛の女子サッカー界だが、今度はノルウェー側が54ブロックを敷いた。つまり、



日本警戒&レスペクト + 自国高さ活かし



という敵国メッセージ。
実際、前半の同点弾を決めるまでのノルウェーは、日本を警戒しすぎてやたら大人しかった。
まあもう、結果から書くがそんななか「3−1」で日本が勝利した。本シリーズ「雑感1」で


どのチームも粗ぇ・・



と概論には触れており、ノルウェーの印象は


北欧勢なんて観てらんなかったな。大きいことを利用するだけで足元もなくダーティでさ



と看破しており、その通りの内容とはなった。まあそんなチームに負けてたら「それまで」とも思っていたので、結果ホッとしています。
ここでは後半の気になった点だけ書きます。


◉日本人監督のトーナメント下手

日頃から日本人監督はトーナメントのマネジメントがへただと看ていて、ノックアウト方式になると、急に采配が「保守的」になる


で、今回もそのシグナルを端々に受けとった。


後半、しばらく続いた「2−1」というスコア。
ここで動けないのは、わかる。1点差は揺らぎだ。
73分、ワントップのリプレイス(入れ替え)のみで、センターFWの田中が植木にかわる。問題は追加点が入り「3−1」となった81分以降だ。



これ以降、誰一人として換えていない



オレはここにノイズを看たよ。
本来(モーレツ決定力)宮澤選手の3点目が生まれた時点で、サブを誰か出すくらい迅速対応でいい。
それくらいスタメンで「引っ張りきった」という時間帯だ。待望の追加点即交代がスジだ。

が、池田監督はガッツポーズをすると、そのまま試合ウォッチャーに戻った
アシストを記録した藤野も、なんなら得点した宮澤も、両サイド遠藤・清水も疲弊していたはずだ。


なぜ換えない?


結局交代枠は植木1枚のみ、でこの試合を終える。
気になるね。ヒジョーに気になる。



「演技でいい。フリでいいから換えろ」



とオレなんかは想う。
この試合で指揮官が示してしまったノイズは「スタメン以外信用していない」というサインだからだ。
むろん「ちがう!全員でチームだ!」と弁護するだろうしその通りだろうが、しかし替えてないのだ。


このノイズをバカにしてはいけない。


メンバーと指揮官の不協和音がこの試合の「交代1枚」に始まるかもしれない。てか、オレはそこしか気にしていないんだわ。

なぜなら今までの「決定力」は今までのチーム力に由来していると考えるからだ。こういうノイズから、その微細なチーム力にほころびが生まれる。チーム力がほころべば「決定力」も低下するだろう。それを気にしてるんだっての。くり返すが、


「フリでいいから、だしてくれ。
 チミの選んだ選手たちだろ」


池田監督は自分の仕事を数十分の間忘れ、試合ウォッチャーとなった。このノイズは後々効いてくる。
この際もっと言おう。ピンピン元気なママ大会を終える控え組と、疲弊しきってへとへとスタメン組という事態にならないようにしてくれ。怖くても「未知数」を出せ! それが勝負ゴトの「勇気」だ!

指揮官たる者その「ひらめき」を鍛えてナンボだ。
ベスト8、ベスト4とあがればどんどんその「ひらめき」も狭くなる。だから言うんだっての。


アメリカ帝国の終焉

目ざとく大会を貪欲に愉しむ諸氏は「FIFA+」でベスト16屈指のカード「アメリカvスウェーデン」も観たことでしょう。この勝者と日本は対戦するわけだが勝ち上がったのは


スウェーデン


だった。2大会連覇中のアメリカが大会に別れを告げた。これは象徴的な事件かもしれない。
観た人はお気づきの通り、


USAに往年の強さがない


と感じたのではなかろうか?
再三鋭いシュートを放つものの、それでいて、そこはかとなく弱含むアメリカを、オレも試合中感じ取っていた。で、スウェーデンもクオリティが足りず、アメリカ押し気味の中延長へ。


決定的なのが、ピノだった。


アメリカのレジェンド、ピノが延長に姿を現すが往年の輝きがまるでなかった。あんなに「上手かった」選手(たぶん女子イチうまかった時期ある)がもう全然だめで。最後PKも外すのだけれども。


アメリカのエース、モーガンしかり。


想えば絶対的センター・ワンバック(懐かしい!)がデンと中央に居座り、若いモーガンがちょこまか周辺を動き、ラピノーが供給しまくる・・ってのが一時期の超強いアメリカのセオリーだった。

今ではモーガンが絶対的センター・・というかピークを越え、まるで「ベテランのクリロナ」のように動かず仕事しない・・実際今大会のモーガンは無得点で終えたわけで、確実に一つの時代が終わった。

フレッシュなスミス選手や、あのロッドマンの娘ロッドマン選手も泣いていたがそりゃそうだよな。
若い選手はこの敗退を受け容れられないだろうが、弱含むナニカを押し返すこともできなかった。


◉残された最後のレジェンド

先日「雑感2」でカナダのシンクレア、ブラジルのマルタに言及したが、これでモーガンピノと、一時代を築いた女子サッカーのレジェンド達が相次いでこの大会を去った。女子サッカーは絶賛「世代交代」真っ最中だ。


が、もう一人だけ。


もう一人だけ、最後に残るレジェンドが、いる。
オレは彼女の大会になることを願ってる。それが




熊谷紗希だ。




なお単語としての「レジェンド」を水増しして使っていない。熊谷はガチでレジェンドだよみなさん。

あの2011年の優勝で海を渡った熊谷選手は、ドイツ(FFCフランクフルト)でチャンピオンズリーグ(以下CL)の決勝を経験する。そののち、フランスのオリンピック・リヨンに籍を移し、



5年連続、CLを制覇した
女子サッカー界を代表する名選手



なんですよ。いいですか、5つのチャンピオンズリングを持ってるのが彼女だ。それもCLだ!
(なお熊谷退団後、リヨンはCLで結果を残せていない。)

その後バイエルン・ミュンヘンで2年。ブンデスリーガを制覇し今はASローマ所属っつー、とんでもないキャリアの持ち主が熊谷紗希なんですよ。

本来もうネイルギッラギラ、金髪ドレッドのバチクソメイクかまして試合に出ていてもパイセンすら誰も文句言えないくらいすごいのが熊谷なんですよ(キメてほしいけどね、キャプテンなんだし!)。


むろん彼女は、12年前の最後の形見でもある。
彼女にとっても、後悔なき大会にならんことを。
切に願っています。




ユニフォーム交換するリヨン時代の同僚、熊谷とヘーゲルベルグ
なおノルウェー代表・リヨンFWヘーゲルベルグは2018年に新設された初代「女子バロンドール」受賞選手でもあった(※出典