わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

冨安黄金期になにを残せるか

アーセナルの冨安健洋選手。
改めて紐解けば、当初アンダー世代で見かけ、当時はボランチをやっており「なんかすげー選手いるな」と思ってたらアレヨアレヨと頭角を表した。世界的スカウトが見逃すわけもなく、アビスパ福岡から日本の衛星基地局シントトロイデンに入るやすぐレジーナに。それも束の間、程なくアーセナルへ。
そしてその初年度よりチームで大切に扱われている選手だ。彼を見ているとスーパーな選手はとにかく出世が早い、という感慨しかない。

もちろん日本サッカー界もユース年代より大切に育てた選手の一人だろう、冨安選手(現25歳)。
彼がトップフォームであり続けられるこれからの数年(つまり次のワールドカップ)までの間で、




日本代表はどんな成果があげられるだろう




そう思わざるをえない。
今の時系列を「冨安黄金期」と俯瞰するならば、後生に何が残せるだろうか、とふと想うのだ。

なお2022年カタールワールドカップでのベスト16。
これも吉田ー冨安という、今までのハイレコードだった「闘莉王ー中澤」ラインを優に越えるセンターがいたからこそ実現したとも言え、つまり一定の強さにはなんらかの要因があり、冨安選手という布石は絶大だ。(注:もっとも板倉選手の存在を忘れたわけではない。カタールでは冨安はケガしておりドイツ・スペイン戦は「吉田ー板倉ライン」の実績である。しかも彼もケガ明けだった)

要するに「冨安黄金期」とは三苫や久保など現代表の充実具合を包摂した「史上最強」的現在を総評して言っている。そしてそんな想念の中にある日本代表を、自分は生温かい眼差しで見ており「まあ大崩れはしないし当分安泰安泰」状態ではある。その感慨は今でもかわらない。が・・



今回のアジアカップのイラン戦にどうしても
ジーコジャパンのオーストラリア戦



をダブらせて看てしまうのはオレだけだろうか。
2006年ドイツワールドカップ。中田ヒデがいて、中村俊輔、小野など黄金世代の絶頂期。
当時も「史上最強」と謳われ、日本の期待を一身に受けたジーコジャパン。しかしその羽は、初戦のオーストラリア戦で脆くもちぎれ落ちた。

試合の流れも酷似している。
20分過ぎ、中村の得点で先制し折り返すが、後半明らかにギアを上げたオーストラリアが空爆とプレスを開始する。放り込みサッカーに押されピッチは恐慌状態に。坪井は足を攣りDF陣は何度もベンチを見る。守備を補充してくれ、と。しかし指揮官はなかなか動かない。しかも攻撃のカードを切り、機能せず後半3失点に沈んだ、あの痛ましい試合だ。


史上最強というワード
先制し折り返す(今回なら守田)
後半明らかにギアを上げられる
空爆とプレス、放り込みサッカー
動かない指揮官(フリーズする指揮官)
ベンチは攻撃のカードを切り、機能せず
選手交代はリプレイスのみ、システム変更ナシ


どうだろうか、似てないだろうか。
もっともあそこまで(あのオーストラリア戦)の恐慌状態ではないにせよ、確実にイラン戦も日本は恐慌に陥った。つまり機能不全を起こしたのだ。交代カードもまったく同じだ。おまけに「史上最強」という文句まで一緒。


申し訳ないが、まだある。


ザックジャパンの2014年も「史上最強」と謳われ初戦のコートジボワール戦で後半明らかにギアを上げられ恐慌状態になった。結果まくられ1−2の敗北。これも書こうか。共通点に赤を入れる。


・史上最強というワード
・先制し折り返す(16分本田)
後半明らかにギアを上げられる
空爆ものすごいプレス放り込みサッカー
動かない指揮官(フリーズする指揮官)
ベンチは攻撃のカードを切り、機能せず
選手交代はリプレイスのみ、システム変更ナシ


まだまだあるよ。
じゃあ今度は2018年のベルギー戦といこうか?


史上最強というワード
先制し折り返す(48分原口)
後半明らかにギアを上げられる
空爆とプレス、放り込みサッカーフェライニ
動かない指揮官(フリーズする指揮官)
選手交代はリプレイスのみ、システム変更ナシ



ふー。おつかれっす。(2014年のコロンビア戦とかもあるがもういいでしょ。割愛する)

先制」し気が緩み、後半相手に「明らかにギアを上げられ」「対応できずフリーズ」。恐慌を抑えられない日本サッカーの20年史がここにある。

今回のイラン戦もまさに負けパターンを地で行っており、2024年にもなって同じことをくり返していることがまさに「芸が無い」と言えよう。

今回唯一救いだったのは「アジアカップだった」という一点に尽きる。

あとのない、4年間の総決算であるワールドカップ本戦でなくて本当によかったと切に想う。
しかし意識しなければまたやるよ、必ず。それは歴史が証明している。一番芸が無いのがこれだ。


動かない指揮官(フリーズする指揮官)
選手交代はリプレイスのみ、システム変更ナシ


日本サッカーの歴史は「リアルタイムに可変できましぇーん」「予め考えた計画以外対応できましぇーん」に彩られている。再三ここでも書いているが現指揮官もまさにその最たるものだ。
リアルタイム可変、リアルタイムでのシステム変更がヘタクソ・・というか、考えすらしていない。

しかし・・しかしだ、

今回も「ベンチからの指示がない」とか「なぜ3バックにしない」など巷でも(選手からでさえ)語られているが、それら今挙がっているギロンなど、すでに既出のことばかりであり、何度もなんども交わされた言葉なのだ。

我々はタイムリープするかの如く、同じように批判しては芯に響かず、それさえも忘れてゆくのだろうか。しかしちょっと考えれば、それは絶望でしかない。自分のブログを引用しよう、


逆に「
続投」を推す人々の心理に問いたい。


彼らが全面的に「勝つ」ことにコミットしているのであれば「悲劇」も待っているかもしれないよ?
ということを。また森保政権が始まったとして、


塩試合に耐えれますか?


と。次のW杯まであと4年もあります。
期待値は高くしない方が良いでしょう。

続投論について考える 2022 - わが心のBlog


イラン戦のような「塩試合」は現指揮官の二期目の始まりからすでに予言しており、それが顕現したにすぎず驚きもしない。が・・



しかしそうして、考えるわけですよ
冨安黄金期に果たして何がのこせるだろうか、と。



ここにおいて冒頭に戻るのだ。
史上最強・・実際選手は揃っていながら、あのオーストラリア戦後のような焼け野原は二度とごめんだ。が「その確率は低くない」という得も言えぬ寂寥感。


まだまだ準備がある。
「己と敵を知れば百戦危うからず」


「己」と「敵」をただしく見つめてほしい。
そして見つめるだけでなく、動いてほしい。
変わってほしい。その場で対応してほしい。


とくにコーチ陣。ただでさえ「ポテンシャルをドブに捨てた」アジアカップ。その後に湧く想念だ。
我々は冨安黄金期になにが観れるだろうか。