わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

M-1グランプリ2023



M-1グランプリ
本当に「年末の風物詩」まで浸透した、コンペティション(コンテスト)文化の結晶である本大会を今年も愉しんだ。誰もが自身の意見や感慨をもつだろうことで、まさに自分を棚に上げ(一度でも板の上たったことあるんかい!って事実を棚上げ)、あーだこーだ書こうと思う。以下、敬称略



◉もうほんと若い大会
松本人志審査員長が冒頭で言うとおり若く、入れ替わった大会だった。まさに若手。第七世代という言葉が「すでに」中堅を指す流動感。この入れ替わりの激しさはまさに人気業種(!)であることを示し、8500組以上(挑戦者17000人以上!)という史上最多の出場者からもわかる。すんごい大会だな・・


◉そうは言っても歴史と流れがある
愛好家は番組の前にやる「敗者復活戦」から愉しむもので、入れ替わりのあるフレッシュな布陣ではあったものの、いわゆる「無名」は一組もいないと知っている。決勝初出場の令和ロマン、シシガシラ、マユリカヤーレンズダンビラムーチョ、くらげ。彼らにしても前年までの「敗者復活戦」で印象を残している。ワイルドカードには1組しか選ばれないが印象とポテンシャルは人々の間に残るわけだ。だからオレも「敗者復活戦」がすき。
(例えばくらげは去年準々どまりだったがそのときの「的確な恋のアドバイス」の方が良かったり。ダンビラムーチョの唄モノも去年の方が面白かったよ、とか、ちゃんと印象残ってるモノよ。令和ロマンはどらえもんみたいのやってたんじゃなかったかな)


◉マイ・採点評
「メモ」にマイ採点をつけるのも楽しみの一つ。
というわけで決勝はこうでした

令和ロマン    94 S
シシガシラ    87
さやか      91
カベポスター   90
マユリカ     88
ヤーレンズ    93 A
真空ジェシカ   91
ダンビラムーチョ 88
くらげ      88
モグライダー   92


80点台が多いのは決して辛いからではなく、一発目の「令和ロマン」が基準となったため。これは審査員のみなさんもこぼしていたが、そうなんだよな。1組目は大切で今回も審査員泣かせな大会。
審査員として日の浅い山田邦子はそこを判ってないように個人的には感じ、評点が一人ぶれていた。


◉各寸評


令和ロマン    94
去年の「敗者復活戦」でも面白かったがとにかくボケの存在感と安定感が増し、表情から何から何まで的確に成長していて驚いた。自分もこれが1組目か・・と悩み94としたところ、結局令和ロマンの印象を誰も越えられなかった。

シシガシラ    87
これはねー。アノ「敗者復活」を勝ち上がったんだからもっとないのかい!という悔しさも含む。むろん彼らの「敗者復活」も面白かったがオレは「ヘンダーソン」に1票だったので、ヘンダーソンの分も頑張ってほしかったっつー勝手な忸怩から−1点してこの点数に。むずかしいものです。

さや香      91
実力・安定感抜群。かつ「さやか」節。個人的には「交換留学生」という題材のポピュラリティーが少ししっくりこず、この点数に。

カベポスター   90
審査員のコメントをなぞるようだがオレも感じるので仕方ない。笑。怪談ものは「尺」を喰うから笑いの玉数がへる。そこを指摘されていたがまさにでしょう。彼らの知的なヒネリ特性をもっと見たかった。

マユリカ     88
たしかにあの「キャッチコピー」は失礼だ。怒っていい。本篇はボケの人が「両腕を軽く肘に添えて登場する」、オレはこれがまず引っかかった。つまり「斜に構えたオンナ」スタートかと想ったら実際はダンナ役。そのズレの回収に時間がかかった。それと声のボリュームが二人で合ってなく緊張からか、もったいない印象。評価高いのもわかるけど、令和ロマン基準でこの点数となった。

ヤーレンズ    93
クラシックな人物模写漫才だが、その人選とクオリティが爆発。これは披露後すぐは「92」として「93」を空けていた。まだ組みが残ってるからね。でも1回戦を終えたところで1点加算し、この点数に。令和ロマンの次だな、という評価に。

真空ジェシカ   91
真空ジェシカのハイセンスさシュールさ。点数が伸び悩むのは彼らの漫才に目が馴れたグルメの所業。こわいな、ほんとM-1は。むろんライブなど大入りのコンビで優勝なくとも大丈夫でしょうが彼らは獲りたいのでここに上がるわけで、鮮度にいくか、何を磨くか、正念場なのでしょう。

ダンビラムーチョ 88
審査員の指摘通り一発目の「おい!」までが・・。去年の「敗者復活」の楽しさを覚えているしがんばってもらいたいのだが、唄モノ漫才の玉数の少なさはM-1で優位に働かない。そのジレンマに当人達は直面しているのでしょう。

くらげ      88
シシガシラ、ダンビラムーチョ、そしてこのくらげに共通するのはシステム漫才を組み「一点突破すること」だろう。無論それが「ぶっぱまれ」ば爆発するが審査員はもっと「人間」がみたく、もっと「メタ視点」が必要だと感じる。くらげは「ダサいのに詳しい・ダサいのに的確」で笑いをめざしている。が、勝つには「もう1ひねり」メタ視点がないと「一点突破」はむずかしいのかもしれない、と想った。

モグライダー   92
今回のモグライダーに(今回の平均から)「92」は自分でも上げすぎだと思うが、ファンなのでね。モグライダーの、いかにともしげという人物を苦しめ引き出すか、という挑発的な手法は唯一無二。それで勝ち上がってくる度胸は本当に大したものだと想うのです。



◉優勝決定戦
令和ロマン、ヤーレンズさや香
これはもうね。見たとおりですよね。オレは令和ロマンの度胸・落ち着き・スター性で間違いないなと個人的には感じたよ。逆にヤーレンズと4−3の死闘となったのが意外だったくらい。もちろんヤーレンズも面白かったです。

さや香はね、そりゃケンカ絶えないコンビだよな。
あの大一番で独白・相方置いてきぼり。・・この選択の「度胸」自体は大いに買うがオレなんかはコンビ仲を心配しちゃうけどね。彼らの未来に幸あらんことを願っています。

2001年、初代「中川家」以来の1組目優勝
それも結成5年目? 20代だよな。そりゃ「来年も挑戦します」ってキモチわかるよね、もう天下獲っちゃったのか、と自分達に驚く感じでしょう。
でも実力に加え「鮮度」いのちのこの大会。
お初で優勝は(逆に言えば)セオリー。
それに間違いなく今大会で一番だったでしょう。今年も長丁場、愉しみました。


おめでとう、令和ロマン。