わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

ハリルホジッチの正体 Pt.2

パート1で、とりあえず、「解任論」の(オレが思う)内容に触れた。
まとめると、

◎アフリカ(アルジェリア)での成功体験、フィジカル主義とカウンターしか戦法がない
◎後半の選手交代が異常に、病的なまでにいつも遅い という性癖がある
◎フランスで育っただけあって、言い訳の達人 という側面もある
◎日本らしさに関心がない = 身体の特徴など日本的な特性を勘案に入れていない
◎日本らしさに関心がない2 = 連動しない。(アフリカ代表よろしく、)個人技に頼る
◎ゆえにW杯を任せられない

こんなところだろうか? しかしどうだろう。
彼が就任したタイミングや彼自身をつぶさにつぶせば、今の状況は必至な気もしてくる。
なんのマジックもいらず、とても自然に、今のハリルを取り巻く混乱に辿りつく気がするのだ。
パート2はそのハナシであり、解任論の本質に触れる。

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まず、ハリルを特徴とする《フィジカル重視のカウンターサッカー》。
じつは、これはもう就任当時に、彼のこのやり方は分析され発表されていたのだった。
べつに他意もなく、今のこの<フィジカルカウンターサッカー>を目指すことは、就任当時からの確定事項だったわけである。 当時の記事を添付する。

上記の(木崎慎也さんの)記事は、ハリルの指揮したアルジェリアが「ボールより人が走るサッカー」だったとデータから明らかにしている。当時のオランダやコスタリカとも数値的に似通ったことを踏まえ、ハリルのサッカーは《堅守カウンタースタイル》であったと分析。さらにパス成功率が対戦したどのチームより低かったことを指摘している。それでも勝ち上がったことはなにを意味するのか? 記事のラストを引用すると、

ひとつはっきり言えるのは、ザッケローニ監督がスタイルを貫くロマンチストだったのに対して、ハリルホジッチ監督はスタイルには固執しないリアリストということだ。


ということになる(だいぶ、記者は言葉を選んでいるが)。
キーワードとしての「リアリスト」。
このリアリストという単語こそ、ハリルホジッチを知る上で超重要なワードであることは間違いない。
思い出してほしい、先週のオーストラリア戦を。 彼はホンダのゼロトップを披露した。

そこで、あらためて思い出して欲しいことがある。
過去に、ホンダのゼロトップをおこなったリアリストの名前を。

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そう。岡田武史氏である。
岡田武史元・日本代表監督は「世界と伍するために」、スーパーリアリストとして、スタイルをかなぐり捨て、ドン引きカウンターサッカーを決行した。その結果2010年大会でベスト16に進出した。
彼が採ったのも考え抜いた末の、ホンダのゼロトップなんである(若く元気な)。
私はここに、ハリルと岡田氏の哲学としての共通点をどうしても見てしまうのだ。断言レベルで

ハリルはリアリストである

と強く言っておきたい。その証拠が、「ぜったいに負けられない闘い」においてのホンダゼロトップ&後半のリトリート(←撤退・後退。サッカーではベタ引きの意味)サッカーなのだ。
ここでリアリストの君にクイズをだそう。

Q. 代表監督であるあなたは、協会に睨まれています。
協会のエライ人はあなたにこう言いました、
「次の試合、負けるようなことがあれば、更迭も辞さないよ?」と。
さあ、あなたならどうしますか?

 
リアリストの君の答えはただ一つだ。「ぜったいに負けない試合にする」。
そして拳を振り上げ、こう宣言するだろう



俺はサバイブする!



年俸を自ら手放すような、愚かなマネを誰がするだろうか?
誰が理念に燃え、若手を試そうとするだろう? 誰が理想のサッカーを目指すだろう?
堅守・カウンターだばかやろう! 万が一同点になったら、ドン引く! 絶対オレはサバイブする!
こう思うのが、  世  界  基  準   である。


保身? なにを言ってるのかわからんね。本当にプロフェッショナルなのかね、君は?
私は日本の永住権も、選挙権も持ち合わせていない。もちろんベストは尽くすがね? ハッハッハ!
こう言ってワインでも傾けるに決まっているし、そこになんの罪があるだろう?

いいかい? ここでも《トレーニングデイ》がある。
つまり、指揮官が「性善説」の持主であると、誰が決めたのだろうか? ということ。
はっきり言って、オシムやザックのような日本を鑑みてアジャストした人物は、神様に近い。
それくらいの奇跡なのだと考え、接した方が計算がたつ。世界の構成員は人格者だけではないのだ。
いわんや、 彼 ら は 日 本 人 で は な い 、 あ た り ま え だ が 。

その筋で、いったん落ち着いてハリルの言動を思い出してごらん。
なんら、不思議なことを言ってないことに気付くだろう。

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ハリルに限らず、外国籍の監督の解任論には、こんな日本人の「思考の癖」がついて回る。
その論調のウラには、「ハナシがちがう!」という恨み節がついて回るのだ、ぜったいに。
しかしそんな契約は誰もしていない。それに真の、理想の監督像なんて誰も目指しちゃいないし、仮に、そんな理想があったとして、だからナニ? 目指すには人生は短すぎるけど? ってことになる。
正義とは、勇ましくも危険でとてももろい思考だ。角度が変われば、正義は反転するからだ。
ハリルの角度から見る正義を、誰も責められない。(マスコミやファンは責めるけどね)
これらは専門用語で、「コンテキスト(背景濃度)」の問題として捉えられる。
ローコンテキストの人物に、ハイコンテキストを強要している。企業で言えばすなわち「ブラック」だ


冒頭に「とても自然な流れで、今のハリルを取り巻く混乱に辿りつく」と書いた。
その、混乱という意味でもう一つの要因に、協会側の人材マネージメントの「稚拙さ」がある。
前任アギーレをトラブルから解任した時点で日本代表監督の地位は「ジョーカー確定」だったからだ。
この時点で、ほとんど海外の監督に頼る「意味」を失っている。

もうアジアカップも終わっており、自分のサッカーをテストし、育てる時期もない。
そこでハリルくん、「君には老いてきたベテランスターを切ってほしい」なんて身勝手な頼みを協会がハリルに言えるわけがない。仮に言っていて約束したとしても、守れるわけがないし、金に目がくらんで契約するに決まっている。
思い出して欲しい。アギーレを切った時期を。2月。どこの監督が欧州に残っていると言うんだ?
(それに残念だがアジアに行くことが彼らにとって「都落ち」を意味することも念頭にいれて欲しい)

協会はオフト監督以降、外国籍監督を招聘してきた。
しかし、その《気づきや後悔、ハウツー》が協会に蓄積しているわけでもなさそうだ。
そういうことが、ハリルを眺めてるだけで充分つたわってくる
日本サッカー協会は数々の失敗を経てさえも、性悪説を採る人物の取扱い説明書」「ハズレを掴まないための交渉完全マニュアル」も制作してきてはいないだろう。 だいいち、どんなサッカー目指して、彼にオファーしたのよ? 木崎氏の記事のとおり、就任時には宣言されていたのだ「カウンターだよこの監督は」と。 そこでこの混乱と不信任だ、じゃあどうしてハリルを選んだ!?
可哀想だろ、ハリルが。 逆ギレしたっておかしくない。「オレはどうすりゃいいんだ!!!」

10月の代表戦ウィークも、いつもながら日曜日に集合の、木曜日の本番でナショナルマッチだ。
ナカ2、3日で本予選というタイトスケジュールで、監督が準備を仕切れるわけがない。
ハリルが自分のアフリカでの成功体験に頼ったとして、なんら不思議ではない。
しかもここはアフリカではなく、アジアなんだから混乱まちがいなしだろ!笑
そんな愚かなヒューマンエラーだけをとりあげてみても、とかげのシッポにしか見えない。
選考、いや、それ以前からなにも変わっていない。問題の本質はハリル(のエラー)ではないのだ。

オフト以降、協会とマスコミと一般人(!)の日本サッカー界が蓄積したことと言えば、見栄とプライドではないだろうか? プライドはあってもいいが、FIFAランキングで何位なのか、も同時に知っていて初めてフェアだ。 圧倒的に、相手を知ること、世界への距離感がたりないのではないか?
もう一度ききたい。 なにが「日本らしさ」なんだろう? オーレーオレオレオレー。
もしそんなものがあるとすれば、この官僚的な蓄積のなさこそが日本らしさかもしれない。
未だ、日本はトレーニング・デイ(訓練の日)でしかない。
目の前の人物から、学べ。 そして目の前の人物を、助けてみろ。

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この記事
も紹介しておこう。 ボスニア紛争ハリルホジッチ

ボスニアは難しい時代を送ってきた。妻が2、3日前に日本の歴史の本を買ってくれたが、日本も非常に難しい歴史があったと知った。個人としても人生で困難な時期があった。ユーゴスラビアの戦争では私もそこにいたし、負傷もした。守ることを知り、国を守るためにたくさん戦った。
そこでは自分の仕事に信頼を持っていた。その中でフットボールと出会い、フットボールのおかげで人生が素晴らしいものになった。選手そして監督としてタイトルも数多く取った。


上記引用は記事内より、日本代表就任会見でのコメント。
そう。「戦争の美談」などあるとまーた反射角がかわり、鈍るものさ、批判の純度とか。
そう思って、わざと紹介するよw


最後に、意地悪な想定を立てよう。それは、
「今、特に東アジア地区は、サッカー界にとって超評判悪いだろう」という仮説。
これは欧州で活躍したのちリクルート中の、架空の監督AとBの会話の形をとってみたい。
こんなブラックな会話でこのトピックを終えようと思います。
みなさん、ごきげんよう


A「今なんつった、おまえ!?」
B「オファーがあったんだよ、日本で代表監督やらないかって。悪いハナシじゃなさそうだよ」
A「お前、キャリア終える気か? やつらクソだぞ?」
B「え、そうなの?」
A「ああ、FIFAランクは50ナン位で超弱ぇくせにな、自分たちはバルサかなんかだと思ってんだ」
B「そんなマインド、地元クラブで慣れっこじゃないか」
A「でな、大衆も報道もガキでさ、自分たちの弱さほっといて、そのうちおまえだけを口撃するぞ」
B「うーん、でもカネが欲しいよボク……」
A「相手はプライドと主張ばっか高ぇ亡霊だ……おまえ、耐えれるか?」
B「No Racismだよ、FIFAは! それにカネが……」
A「あの気にくわねえハリルですら、神経ヤラれたからな、100%やんなるぞ?」
B「うーん……カネが……」
A「協会も頼りねえから、すぐハシゴ外される。 気付きゃ、アジアの地で孤立無援さ」
B「でも……すごくいい人たちだったけど」
A「その期待が怖ぇのよ。すぐ裏返る。とにかく悪いことはいわねえ。日本と韓国だけはやめろ」
B「……そうかも。べつに、どうしてもってわけじゃないよね。ハッハッハ!」
A「そうだよブラザー。ハッハッハ!」