わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

This Guy's In Love With You



ポップミュージックの巨匠にして映画音楽家でもあったバート・バカラックが亡くなった。
94歳の大往生。今日は追悼としてこの曲を。


This Guy's In Love With You


バート・バカラックの名曲は数あれど、私は「雨に唄えば」「Close To You」とこの曲が大好きだ。
(なおカーペンターズの「Close To You」は観測史上もっとも天国に近い歌の一つだと私は思う。いつか「天国に近い歌特集」したい)


ペット奏者ハーブ・アルパートのヴォーカル曲として1968年にシングルカットされたこの曲。
その後瞬く間に広がりこぞってカバーされるようになる。同年68年だけでもダスティ、コニーフランシス他5人の著名なシンガーがカバーし、バカラック自身も初の全米トップ1に輝いた名曲中の名曲。

聴いてもらった方が早い。
ハーブ・アルパートのオリジナル
This Guy's In Love With You」!



ハーブ・アルパート自身プロデューサーでありトランペット奏者だ。つまり専門ヴォーカリストではない素朴さがオリジナルの途轍もない魅力だ(今相当野暮なこと言ってるが本当だもん。続ける)。

この素朴なヴォーカルに乗せる歌詞がまたすばらしく素朴で美しい。これは作詞家ハル・デヴィッドの仕事。バートバカラックとの天才タッグである。



同年1968年、ダスティ・スプリングフィールドのカバー。性差へのリクエストがあり「This Girl's 〜」となっている。このヴァージョンも大好きで実は、自分のショートフィルムのエンディングに使ったこともあるくらいだ(仮でね。当時版権とりたかったくらいだった)。



サミーデイビスJr. テリーホール。わーもう、みんな鬼籍だが他のカバーもいくらでもある。それくらい世界中で愛されている一曲だ。


This Guy's In Love With You
Music / Burt Bacharach  Lyric / Hal David

You see this guy, this guy's in love with you
Yes I'm in love who looks at you the way I do
When you smile I can tell
we know each other very well

How can I show you
I'm glad I got to know you 'cause
I've heard some talk
they say you think I'm fine
Yes, I'm in love
and what I'd do to make you mine

Tell me now is it so don't let me be
the last to Know

My hands are shakin'
don't let my heart keep Breaking 'cause

I need your love, I want your love
Say you're in love, In love with this guy,
if not I'll just die  

Tell me now is it so
don't let me be the last to Know
My hands are shakin'
don't let my heart keep Breaking 'cause

I need your love, I want your love
Say you're in love, In love with this guy,
if not I'll just die

わかるかい この男 この男は君に恋してる
そうボクさ 誰がボクほど君を見てるだろう
君が笑えば 僕たちは互いにわかりあえるんだ

どうすれば示せるだろう 君とあえた喜びを
だってボクは いくつか聞いたよ
君がボクのこと いいって言ってたって
そう ボクは恋してる
どうすればいい 君をボクのものにしたい

今教えてくれ そうじゃないと
最後に知るのは ボクじゃないって
手が震えてる
心が壊れないようにひっしなんだ だって

君の愛がいる 君の愛がほしい
好きだと言ってくれ この男を愛してると
でなきゃ ボクは しんでしまう


意訳 By オレ
(なお女性版「This Girl's〜」は性が逆転します)





最後に。

そもそもこの歌は一体なにを語っているのか
ここにも深い味わいがある。

彼女への永遠の愛を謳っているような始まりから、どうもそうではなくこれはその全然前の話、今から告白する者の曲ではないか、と印象が変わってゆく。その変化は作詞家ハルデヴィッドの天才技法だがオレはこの曲「かけ離れていたらいるだけいい」と考えている。たとえばスクールなら、


クラス単位ではなく「学年単位」で。
相手「You」は学年のマドンナ
「This Guy」つまり自分「 I 」は
学年の一番目立たない層の住人



そうイメージしてこの曲を捉えるとその「岡惚れ」感がより浮き彫りになるんだわ。
失恋でさえなく「無恋」。そう捉えると涙なくしては聴けない凄みのある曲になること請け合いだ。
よもやストーカーの曲として聴いてみてごらん。キレッキレの曲に様変わりするから。
つまりそれほど、豊かな含意に充ちた歌だ。

バート・バカラック氏を哀悼して今日はこの曲ばかり聴いて過ごしました。