わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

オールタイムフェイバリットMVの話

ミュージッククリップ。極めて大好きなジャンルだ。
すっかりヒト月空いてしまったが音楽の続きとして、ミュージッククリップについて少し随筆を。
なおクリップ好きとしては音楽トピックでたとえばこんなのも書いてます。
紹介します。ガンズはアツいよ

(ちなみになんと!ガンズがオリジナル映像を改悪してやがる!!いまVEVOに上がっているMVはひどい出来なのでした)

またこのブログのアーリーエントリーで、Jay-Zマーク・ロマネクの「99Problems」についても論じています。ぶっちゃけ必見だ。し、まさかここに、ディレクターズレーベルを知らんヒトなんて居ないだろうね?(もし居たら、速攻DVDを買って観た方が人生にいい)


さてそんなわけで、クリップ大好きっ子としてベストな、いやベストではなく、思いつく好きなクリップをあげる。なんで好きかも所見としてあげたい。ではいくぜ!
マイオールタイムフェイバリットクリップ特集



INXS「Guns In The Sky」('87)
ウゥ!アハハ!?
一発目はもちろん、INXSでしょ!え?天下を取った「Need You Tonite」じゃないの?
いやあれはいいんだよ、オレが言わなくたって傑作だ。なので、オレはこっちを推す!
このタイトさヘタウマさ!なによりシャープさ
映像作家のセンスとINXSの才能が合わさった傑作がこのガンザスカだっ!
2分半という短さがまたいい。ハッチェンスはいつもながら、最高。しかもなんだこの、ツアーで泊まったホテルで勢いで撮ったぜ感はぃ!それでいて、チェルシーホテルのように退廃的でしっかりムーディ。衣装の変化にも注目だ。さらに、よくよく見ようぜ。タイミング、わざと外してるからね。
この映像作家はものすごくセンスが高い。むろんその自意識や主張・ギミックだけではない。当然のことだがアーティスト、バンドの良さを見事に引き出している。


そう。こうして、映像センスとアーティストの魅力が《妙に際立ってて好きな作品》を紹介してゆく。
で、好きな表現というのもヒトの数だけプリセットが違う。もちろんだ。
オレの場合独断と偏見で、無添加アナログ表現となる。しかも無添加と言いつつ、味の素くらいの舌にピリッ!は辞さないぞ?系の、そんな作品の数々だ。とにかくそこは舌に聴くしかない(笑)。
次はこいつだろう。極めてセンスが高いぜ!



Gang Starr「Mass Appeal('94)
前回に引き続き、ギャングスタの登場。
彼らのクリップ集もオレは持っているが、この傑作をついに超えることがなかったと言い切れる。
それだけ素晴らしいクリップが、これだ。
なんで素晴らしいか? それはルックと言っていい。ルック、視点だ。(色のことではない)
この抑えた演出とカメラワークは《傍観者》であることをやめない。カメラも目線を超えず常に低く保たれる。とくにその意思が顕著に現れるのが、02:00過ぎの氷雪荒れ地シーンだろう。ポエジーだ。
プレミアの悪魔的なトラックと相まってその視点は浮き彫りになる。団地の廊下で始まるリップシーンもけっして気張ってはいない(むしろ気張ろうとするGURUを抑え込んでさえいる)。どうして脱衣をプレミアに持たせているか?、考えてもみてごらん。極めて繊細に日常感を切り取るのみならず、たしかな距離のある《》として完成しているクールな一作。繰り返すが、ことクリップの分野ではギャングスタはこの映像を超えられなかった。



Tricky「For Real」('99)
これもディレクターズレーベルで知られる一作だが、残念ながらオフィシャルMVはVevoされていない。なので楽曲だけ貼らせて頂いた(きっとそのうち落ちます)。ぜひどこかで本編に触れてほしい。

映像作家ステファン・セドゥナウィとの素晴らしいコラボ。楽曲は聴くとおり極上のうえ映像的にもユーモラスかつ同時にソークール、というアナログ表現最高峰のひとつなのだが、なぜユーチューブにないかはここではわからない。(ドコモdTVでは観られそうだ。これは今でもフリーでは見せるもんか!って気概の現れかもしれない。もしそうなら、トリッキーとセドゥナウィを想いすこし嬉しい)

なお、このステファン・セドゥナウィ。ビョークの元恋人で、交際当時彼女と傑作を多く創りだした。今は現代アートに進んでいるようだ。が、ここにMOMAでの「回顧展の報せ」を見つけた。
いまだ元恋人への執着と同時に「褪色」も感じ、なんとも恐れ入るのでした。



Boards of Canada「Dayvan Cowboy」('05)
この流れだとスパイク・ジョーンズに結局行ってしまうので(笑)、趣向をかえこの一本。
ボーズ・オブ・カナダのこの映像だっつーの!
これはアポロ計画前夜1950〜60年代の成層圏をいかに突破するか米ソで争われていた時のアメリカの実際の記録が使われている。なお、パイロットが打ち立てたこの時の記録は数年前のレッドブルチャレンジで更新されるまで50年間破られることがなかった。とにかくこの上空映像の、

なんと詩的なことか——。

気球を離れる瞬間——。ここは楽曲の内省的な魅力と相まって、何度見てもグッときてしまう。
主人なき、残されたコックピットがまた美しい。もうこのフッテージだけで飯三杯級の、一本である。
マッシュアップ・既存映像表現では極上の一品。



Boards of Canada「Everything You Do is a Balloon」('96)
もひとつ、ボーズオブカナダからいってみよう。
これはユーザーによる完全なマッシュアップ映像だ。しかしこのセンスたるや!


超怖ぇから!!!


このそこはかとない、こわさ。
メタリカ「One」の「ジョニーは戦場にいった」感フル満載だっつーの!!あるいはもはや「カッコーの巣の上で」のロボトミーと言えばいいだろうか。使われた映像は60年代の自転車教則フィルムとのことだが、教育がいかに管理的で怖いか、にもつながることだろう。ユーザーセンスが爆発してる一品だ。



------------------------------------


さて。そんなわけで見てきたわけだが・・・・・・ってここでおわる?!
あまりに後味悪すぎでしょ!しかも昔のばっかでさ!というそこのアナタ!

・・・わかりましたよ。
でもね、それだけ80−90年代のMTV文化は開花していたと改めて想うわけでね。その文字通りの火付け役はJランディス監督作マイケルジャクソンの「スリラー(’83)」だった。そのことに自分も深く同意するし、不動のナンバーワンクリップを挙げろと言われたらオレもどうしようもなく「スリラー」だが、歴史の時間でもない!(←自分に逆ギレ。)

f:id:piloki:20180324013743j:plain

f:id:piloki:20180324014358j:plain

で、今の潮流ももちろん見てます。元々が大好きだし。
どうしようもなく「勉強」としてもね。まだ見ぬ傑作ばかりだとも想ってる。
しかしね、なんというか一時期に比べむろんはるかに技術もプラグインも上がったが、オトナの鑑賞に堪える作品が増えたか?というと、それはちょっとわからないハナシなのだった。改めて、質の高いMVはアーティストと映像作家のコラボレートを素直に愉しめるものだと想うし、それが結局、時間という洗礼を超えて《見応えにつながる》とも感じてしまうんだな。オレはね。

当然! まだまだキリがないが、最近作で感心した「アナログ表現」の素敵かつ《王道》を2作鑑賞して、この記事をおわろうと想います。
さて長くなりました!ここまでありがとう。みなさんのオススメもおしえて欲しいな!では!