わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

いい玉の少ないJAZZYの世界

Jazzy Hip Hop。
めたくそ大好きなジャンルだが、本当にほんとに



いい曲は少ない



JAZZはヒップホップの黎明期からもちろんサンプリングされている。
というか、その歴史がすべてでもある。(ファンクやソウルからの引用はもちろん言うに及ばず。リックルーベンのロックからの引用などあるがとにかくのハナシ!)
だから「Jazzy Hip Hop」というのは少しおかしい。
少なくともアーリー90s、ミドルスクール前夜からミドルスクールにかけて、とても良質なJAZZフレーズのサンプリングが行われていた。Eric Bのサンプリングなど80'sの終わりにかけその豊かさは育まれ、ギャングスタDJプレミアの「Jazz thing」('90)が大々的な幕開けであったと記憶している。



今聴いても最高にクール。モ・ベタ・ブルース!
この《ドープなタテ乗り感》にオレはしこたまやられたわけだ。
なんだこのかっこよさは! そりゃさ、むりだよ、やられるよ。当時中学生だぜ? むりむりむり

あとで歴史を思いしることになるが、ロス暴動 ('92) 前夜である。ヒップホップを武器に勢いを増しながらも、未だブラックパワーが鬱屈していた時代だ。モ・ベタ・ブルースのあとに、スパイク・リーは「マルコムX」を撮るのだ。この映画は本当にロス暴動の引き金になる。
その頃のムードをよく現したJAZZYが、BlackbyrdsをサンプリングしたParisのこの曲とクリップだ。



Paris「The Days of Old」('92)。
こっちも屈指の名曲だが「アイム、キューリアス!」ではナイ方ね。すげーいいサンプリング。
(このサンプリング自体は正確にはファンクに属するのかもしれない。が、これまたスゴイJazzman、Donald Byrdが70年代当時プロデュースしたバンドがBlackbyrdsだったわけです)

だが暗いなぁ。悲しいなぁ・・・。
この92年は、はちゃめちゃ重要でドクタードーレが「Nothing but a G Thang」、アルバム「The Chronic」を出す年。・・・なんだけど、歴史の勉強でもないのでこの辺で論を急ぐ。閑話休題



とにかくJAZZYであり、グワッと来る曲は少ない



なんだろう、JAZZをサンプリングしていたらいいのか!、というと違うんだよ。
マインドごと必要なんですよ。現代のオシャレ的「Jazzy」な感覚もちょっと、どころかぜんぜん、まったく違う。ーーだから一本釣りの世界なのだ。このアルバムのなかのこいつだ!という、ごくごく限られた、レアメタルのような存在が実はこの界隈なのだ。

しぶとくがんばって言語化につとめるなら、そうだな、本当に《タテ乗り感》が必要である。
それでいて、リッチなスムースさはマストだ。が、甘ったるくてはいけないのだ。メローなだけ、など知ったことか! エモーションは前がかっていて、知らずうちに、アタマがタテ乗りで音世界に没入していなくてはいけない。これを専門用語で「ドープ」と言うのだろう

な。むずかしいだろ?

そんな中、
墓場に持っていくJAZZYな名曲が二つあるのだが、その前に(現段階の)次点作品を紹介する。
これはかなりいい線キテる!というのが、Mf doomがプロデュースしたこの曲だ。


King Geedorah「Next Levels」(2003)
わかってきたかな?、フレーバーが。
JAZZの極上のスムースさの中にありながら、のっけから「タテ乗」れるでしょ?
ごりっごりのJAZZサンプリングなんだけど、スムースで、かつ、タテ乗り
こういうのは本当に「名うてのプロデューサー」じゃないとカラダで体得していない。だから言うのだ、オサレなだけのJazz Hip Hopだと? はあ!? と。当然だが、一本釣りの世界だっての。
ちなみにトラック自体は、
MF Doomの別名義Metal fingersの2001年のトラック集のなかから「Arrow Root」だ。




それでは現段階で私が、
墓場に持っていく絶曲、2曲を紹介する





Perquisite feat. Benjamin Herman - I'm Walking
プロデューサー・Perquisite(臨時収入、というふざけたネームだぜ)が2001年に発表した絶曲。
(オランダのレーベルから突如アナログのみ発売され、今は幸運なことにデジタルでもあるからな)
これは「ボーカルもの」と言っても差し支えないだろう。つまりBenjamin Hermanのサックスが上奏を雄弁に語っている。そのライド感も極上ながら、この曲はホントウに何度聞いても飽きず、スモーキーで、ユーモラスで、シャープさが詰まっている。わずか2分の、最高級の代物。
なおこの「Outta Nowhere EP」がまた名盤中の名盤。
捨て曲などなくこのアルバム自体が、墓場級である(?)


そして、2曲目はこいつだ。
DJ babu come down Let down!




Dilated Peoples - Pay Attention [Instrumental]
DJ BABUによる傑作中の傑作。2001年作。
Dilated Peoplesラッパー陣の上モノもいいが、このインストトラックこそが、本当に素晴らしい。
ジャジートラック、オレ体感史上最高傑作がこのトラックだ。

あまり言葉も要らないのだが、どこのなにをピックアップしたかがまた。「生のごった煮」である本来のJAZZをどう解釈して「我が物」にしているか、というお手本のような曲でもあるからだ。
サンプル元はAhmad JamalCrossfire」(’76)。
しかし聴くとビビることになるだろう。
Pay Attentionの印象的フレーバーなんか、オリジナルの「意思」のほんの欠片でしかないからだ。
0:58秒からやってくる。注目だ



あっという間のできごとだろう?
しかもオリジナル、Ahmad Jamalの世界ではただの「カジリ」なのである。むしろ全体は全然ポップな曲なのだ。しかしそのエッセンスを最大限引き出し我が物としたのは、まさにプロデューサーDJ BABUのセンスの勝利としか言えない。
Pay Attention by Dilated Peoples | WhoSampled
(こっちにも鬼プロデュースの内訳が載ってるから参考までに。)

青は藍より出でて藍より青し、これぞヒップホップ。もう、やってることがさーー、
JAZZよりJAZZいぜ、このやろう!!



以上、いい玉の少ないJAZZYの世界でした



むろん、ひろく、募ってもいます。
はいはい、なるほどね、もっと名トラックしってるよ?、という方。ぜひ教えて下さいな。では!

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