わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

総評:パリ・ブレイキング


JEFFROのJAZZYスタイル


大好きなダンス、ブレイキングのレビュー。
まず「まさか」のオリンピック競技入りに驚きつつ、感慨深く想った。まあなんだか「次のロス五輪では不採用」とのことでワン&オンリーになるかもだが、それでも感慨深いものがあった。


◉ブレイキングの審査
大会は男女の二日間。しかも唯一パリで認められた新競技となったわけだが



そりゃ観るよね



で、観てて真っ先に想ったのは



あ。これ今回
スタイル系有利だわ
日本いけるかも



ということだった。
女子が初日で、そこで今回の審査基準が露わになったが、本当に立ち技、フットワーク、ミュージカリティが重視されていてまじで「このジャッジはいいぞ」と思った。

パワームーブは大技なだけに目立つわけだが、あくまで一つのポイントでしかない、とする評価基準は審査員の「ダンサー」への厳しい視点を感じたいへん嬉しくなったのだ。即ち、音感と構成センスももちろん問われるしパワームーバーの力技、それもそれだけで印象勝ちしてきた系はひと言で言って「冷や汗もの」だからだ。



「あーこの審査なら信じられるな」



という印象をまず受けた。オレは至極評価する
きっと今回、基準を決めた方々も真剣で、五輪に向け「未来のブレイキングの在り方」も見据え議論したはずだからだ。5つのエレメントにわけ、パワームーブの評価比重を減じたのは、歴代ダンサー達の「祈り」であり「内省」だったのかもしれない。むろん、パワームーブは一つの華だが調和なのだよ。



◉女子大会アミの優勝
女子は・・そして日本の女子は、という限定で言うと「表現が小さい」ことが多いと以前から思っていて実際その傾向はあるんだが、アミさんが獲った。それは前述、審査基準が「ダンス」重視の点もかなり効いていた。これは体操競技ではなくダンスなのだ、という明確な意思表示だ。
良いダンサーが持っているもの、それは何だろう? と言えば自分として断言したいのは



雰囲気



だと思う。一番ダンサーに大切なのは「雰囲気」だよ。纏っているスタイル、会場を掴む雰囲気、総じてダンサーとしてのかっこよさ、なんだが



AMI、持ってるなぁ



と思った。対戦者たちと比べぶっちぎりでスタイル持っていて、イイ意味で「崩れてる」。崩してる。そのかっこよさ。実際彼女の「ターン」を待ち望む、という雰囲気に持って行っている時点で勝ち確だ。
もちろんそれだけでなく高品質のパワームーブも(たまには)魅せないとそりゃ優勝なんてできないがその剛柔のバランスも弁えている、良いダンサーでした。


◉男子大会総評
2日目の男子大会も音に構わないパワームーブ系は総崩れとなった。オレは良い傾向だと本当に思うよ。ブレイクの魅力の一つが、自分の好きなダンサーを大会中みつけることに想うがオレはもう



JEFFRO



一択だった。
アメリカ代表のジェフロのスタイルがもう好きでしたね。ジャジーなんだよ。アメリカの一つのDNAというか、とにかくジャジーで鋭いそのスタイルに私はノックアウト。だがしかしトーナメント緒戦で




フランスと当たる(笑)




やな予感はしたが、まあジェフロ負けたよね。
もうこのパリオリンピック自体、本当に周回遅れのリテラシーで票が動きすぎるので驚きも呆れもないが、まあフランス代表ダニー・ダンが勝ち上がった。この時点で「あ、この選手が決勝までいくね」と見え透いたものがあり、そこは大幅に白けたがね。
(なお、女子大会アミはトーナメントの緒戦でフランス選手を圧倒した。もうこの時点で可能性が見えたように本気で想う)

しかし審査員の気持ちはわからなくもない。
この大会で唯一の「新競技」となったブレイキング。70年代末の発祥から数え何十年の時を越え種目になった事を考えると、審査員としても採用に踏み切ったフランスを持ち上げたくもなるだろうな、と。

しかし言っちゃえば、この大会って日に日に増す「悪行」の数々でもうどの種目でも選手自体「フランス選手と当たりたくない」と想うまでのホラー展開を形成したように想う。ブレイキングも例に漏れずそんなかんじだ。この国はパブリックイメージをこの大会でたいそう下げまくったね、全く。



◉SHIGEKIXの評価
日本のシゲキックスさん。我想うに彼はひとこと、



審査員に飽きられた



って処だと想う。技のバリエーションを測る「多様性」そして「独自性」という面でバトル回数を増す毎に点数を下げていったんだと想う。シゲキックス



予選飛ばしすぎ



だったよ。技出し過ぎだって。トーナメント緒戦くらいから審査員の「飽き」のサインは出始め、準決勝で顕著にでた。このあたりも「厳しい」のが今回の審査員の特徴だし、オレ想うにぶっちゃけ



審査員
もうパワームーブに
飽き飽き



なんだと想う。笑
ブレイキングの様式美って実は歴史上そんなに変わってなく、パワームーブ、もちろんスゴすぎる、スゴすぎること前提だが、審査員からすると「もう飽き飽き」なんだろうなぁとオレさえ思うから。少なくとも「頼ってる」ように捕られたかなって想うよ。

そのへんのコンビネーションや球種への「厳しさ」も実にクールな審査団だった。シゲキックスのシグネチュア「音ハメ」も実はくどかった処あるし、そのクドさも捕られただろう。一方でたとえば、優勝したカナダのフィル・ウィザースなんかは



ターン終わりが潔い



たぶん自分のターンの「終わり尻」が終始一番綺麗なブレイカーだった。自分のターンの「まとめ方」「どう終わるか」。今回そこを見ていない審査員とも想えず、かなり好印象を与えたと考えるね。そもそも「降りないダンサー」にうるさいのが審査員なんだから。

シゲキックスの3決はアメリカのVICTOR
彼の良さ・・きっと初見の人にはわかりづらいと想うが(笑)、この人の良さはクラシックさ、なんだよ。アメリカのもう一つのDNA



ロックステディクルーっぽさ



びんびん持ってる選手でオレ的には好感をもった。
とくだんへんなことはしないが、勝負所をわかってる玄人好みのパワームーブ系ブレイカーだったね。

シゲキックス4位はこのようなプロセスからだ。ハイライトだけ観てる人にはわからない予選含む長期単位の話だよ。とにかく審査員の「飽き」を越える何かを出せなかったということに尽きるでしょう。残念だが仕方ないかなー、というのが感想です。



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まあ「次の大会ない!」ブレイキングでしたが、それもまたいいじゃない。BCもレッドブルもあるし、これを機にブレイカーも増えるんでしょう。以上書き下ろしで自分のセンセーションを綴りました。
その日一番のダンサーを見つけることは順位以上に楽しいものです。それでは!