わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

めくるめく、映画音楽の世界

かなり逡巡する。が、特集を書こう。
美しい、美しい、映画音楽の世界について。
これは書いたからと言って手放すものでも、まさか茶化すものでも決してなく、常にライフワークとして、今も、これからもオレの中にあるものだということは一応改めて言っておく。

というわけで、映画音楽の世界だ。

なぜ、ここについて触れたくなったかと言うと(と言うか本当はオモテに出したくないが・・ってしつこいか?)、どうやら今日、2018年7月28日、NHKのBSで横溝正史原作「悪魔が来りて笛を吹く」がリメイクされドラマとして放映されるからだ。そのセンセーションから《映画音楽》について書きたくなってしまった。

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悪魔が来りて笛を吹く」。1979年。
これは東宝の《市川崑オーセンティック》ではなく、東映製作による「金田一」モノである。
で、金田一耕助は(なんと!)西田敏行太陽にほえろのボンこと、宮内淳も出ている作品だ。
その79年版を今さら、とやかく言ってはいけない気がする。が、




しょぼいのだ




愛を持って言う。愛を持って言うが「しょぼい」んだ。これはどうしようもなく、そうなんだ。
が、ここで問題が発生する
むろんシネフィルであれば、いや、日本全国民が気づいていることであるが、









テーマ曲は最高にシブイ、日本映画史上屈指の名曲








なのだ。ここが大問題なのである。
作品はお世辞にも「傑作」ではない。しかし!音楽は異常なまでのクオリティなのだ。
映画世界と分離して、浮く、ほどいい

これが問題でなく、なんであろうか?

では、さっそく聴いていただこう。
悪魔が来りて笛を吹く」テーマ曲《黄金のフルート》を!



作曲は尺八奏者、故・山本邦山(人間国宝)。
ドープ・・ドープネスだよ
この良さがわからければ君はまだおこちゃまだ。
ちなみにDJや音楽評論家からのレスペクトと評価も当然高く、オムニバスのLPも先年再発さえされているのだが、くりかえす。




作品は・・・うん!




なのだ。大問題だ。こんな素晴らしい音楽の「先」を全然推しきれないんだからな!
「音楽はいいんだけどさ・・」なんてこと、言いたくないではないか?
でも推そうとすると《それ》を考えざるを得ない。これは明らかに不幸なバランスなのである。
ためしに79年の本篇を観てみるといい。オレの言っている意味がわかるから。


むろん。映画音楽はそんな《不幸なバランス》の宝庫だ。イタリアの70年代エピゴーネンものや、イギリスの作曲家ロイ・バッド物、デイブ・グルーシン物なんか、それこそ宝庫だ。
アニメだってそうである。故・Nujabesが音楽を担当した「サムライ・チャンプルー」('05)なんて音楽のクオリティが物語の質に比べ「浮きまくって」いる。藤原ヒロシが音楽を担当した「ユーリ」('95)なども超、音楽だけが分離して本当に素晴らしい。が、それって問題だ。北野武監督に至っては、音楽監督久石譲に常に言うそうだ「あまり作りすぎないで」と。音を抜いてほしいと。映画音楽は作りすぎてはいけない。それはよくわかる話なのだ。


しかし、幸運こそ、同時に「ここ」にあるのだ。


最高な《画の連続》と《音の融合》もまた、映画でしか味わうことのない奇跡のような宝石である。
風の谷のナウシカ」なんてあの曲とあのタイトルバックで最高にしびれ、エリック・セラの「グラン・ブルー」もまたしかり。「バグダッド・カフェ」のコーリング・ユーは若干、楽曲が勝っちまったが素晴らしく、ああ、往年の名画なんて音楽が記憶と紐づきまくっているでしょう?「風と共に去りぬ」「カサブランカ」「エクソシスト」「スーパーマン」「ディア・ハンター」「ブレードランナー」「幻魔大戦」・・枚挙に暇はない。本当にいとまはない。




これから、大ネタを出す。




冒頭に戻るが出したからって自分の外に出るものではない。わが「血」のようなサントラを紹介する。





●「デボラのテーマ」From 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」('84)
監督セルジオ・レオーネ 作曲エンニオ・モリコーネ
説明不要だ。この映画とこの曲を知らないヒトとはとても親友にはなれないだろう。
全国民が哀してやまない絶曲である。

説明不要なのだが、後日談がひとつ、ある。
この絶曲、ウォン・カーウァイが「グランド・マスター」(’14)で使い「やがった」のだ。
映画館でオレは耳を疑った。
今流れてるのはデボラか・・デボラのテーマなのか?・・・そりゃ禁じ手だろ・・と。
はっきり言おう。レッドカードだ。タランティーノでさえ我慢して使っていないこの曲を、使ってはイケなかった。恥ずかしいし映画館で肩を落としたさ。全世界の、どれだけの映画作家がこの曲を使いたくても使わず自分の表現を追求してるかお前にわかるのかこのトンチキ!く□が!だ。



●「エスタンのテーマ」From 「ウエスタン」('68)
監督セルジオ・レオーネ 作曲エンニオ・モリコーネ
セルジオ・レオーネは生涯で8作しか撮っていない。で、映画音楽の巨匠中の巨匠、エンニオ・モリコーネとは小学校からのダチっていうんだから泣けてくるよ。
これはまさに「ウエスタン」のラストシーンをトリビュートしている愛の溢れた動画だ。
どうです、見入っちゃうでしょう。男はこうありたい。そして、女はかくあるべし。
ラスト、全てを物語る長玉のワンカットがとにかく美しい。




●「今夜は青春」From「ストリート・オブ・ファイヤー」(’84)
監督ウォルター・ヒル 主題歌ファイヤー・インク(ライ・クーダー
エスタンから、この映画を。
これも、まさか観てないヒトなんて日本におらんだろうね? 全国一億二千万人が愛するストリートオブファイヤーから「今夜は青春」。もう、みんな知ってるだろうからラスト全部だしだ。
ああソレルズが!そしてああ!トム・コーディーが!
・・ってまさか初見? それはスーパーラッキーだ。この機会に観るんだ!!急げ!
本当に、本篇を観るといい。このラストパートが何億倍にも輝いて見えるだろう。
男はこうありたい。そして女はかくありたいぜ




●「イン・ディス・カントリー」From「オーバー・ザ・トップ」('87)
監督メナハム・ゴーラム 挿入歌ロビン・ザンダー
ストリートオブファイヤーと来たら、この傑作とこの曲を挙げずにはいられない。
これも、まさか観てないヒトは日本に居ないはずなんで、ファイナルシーン全部だしだ(もはや観てない君が悪いんだからな?)。ロビン・ザンダー(チープトリックのボーカル)の「In this Country」が流れる瞬間、極上の極地となる。その、イントロの美しさったらない。

「ぐへへ、鼻から血がでてるぜー?」
最強の敵役ブル・ハーリーの科白を空で言えるほど観たこの傑作は、本当にスタローン映画の最高傑作だ(ロッキー? 素人な入れ知恵だ。いつかスタローン特集もしたい)。この極上の《ラスト30分》の演出を施したメナハム・ゴーラムは天才だ。もっと評価されていい。このシネスコ感もたまらない。とかく後世に多大な影響を与えている。リンカーン・ホーク。ああ!リンカーン・ホークだ。くそ!




●「宿命」From「砂の器」('74)
監督野村芳太郎 音楽芥川也寸志
先日他界した橋本忍脚本。
日本映画、日本のサウンドトラックに戻る。全国民が愛する「宿命」と「砂の器」。
ね? 観てない君が悪すぎるんだ(制作から何年経ってるってね、ネタバレもなにもないさ)。そんなわけなんで、サントラと映画の相乗効果を想うとき、この作品を無視することもまたできない。日本映画屈指の名作である。大ネタすぎるが仕方ないよ、これは。この映画で涙腺が決壊しないヒトと友達にはなれないさ。

監督野村芳太郎の製作ノートの第1行目にこう書かれている。「この作品は一にも二にも音楽である。その成功なくしてこの映画の成功もない」と。
ああ、加藤嘉、その名演と芥川也寸志の「宿命」。言いすぎだ。自分の野暮を呪う。



●「雪の進軍」From「八甲田山」('77)
監督森谷司郎 音楽芥川也寸志(「雪の進軍」は軍歌。詞曲は帝国陸軍軍楽隊の永井建子)
砂の器でドープになったら、これを出さんと失礼にあたるというもの。東宝・橋本プロダクション。
徳島隊隊長徳島(高倉健)の少年時代、回想で青森の美しい原風景が映し出されるのだが、そこに流れるスコア(芥川也寸志)も素晴らしく、また、現実の残酷すぎる雪と相まって極上このうえない。この酷暑にこそ、この映画の再見を薦める。体温が何度もなんども下がるだろう。

「ゆきーの しんぐん こおりをふんで!」はオレがやや退屈なルーチンワークをする時の《エールソング》として脳内再生することも付記する(?)。むろん、徳島大尉のかけ声から始まる。






本当にきりはない。
めくるめく、映画音楽と映画の世界。
この世には名スコア、名シーンにあふれている。

話はつきないが、筆を置く。
さあて、現代版「悪魔は来りて笛を吹く」はどうなっているだろうな?
本当にきりはないが筆を置く。ではでは!