わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

哀と情熱のブラジル

今週はアタマに一つのプロジェクトがおわり、昨日もひとつ提出物が片付いた。
なので夜、鈍った身体を動かそうと「個サル」(個人参加フットサル)にいったのだった。「個サル」は球蹴り中毒患者の集い。あるいはチームに所属できないどこかしら問題アリアリな人々の集いだ。
 
で、やっちまった。
 
今日はカラダが動くぞぉ!
なんてはりきってゴール前までドリブル。
ワハハハ!
キーパー(ゴレイロ)の動きがよく見える!
ラピュタの力を思い知るがいい!
オレは左足を振り抜いた!
 
 
 
ガシ・・・
 
 
 
足下にあったボールがなくなり、そのかわりオレが蹴ったのは、誰かのカカト・・。
カカトと足の甲のどちらが強いだろうか?
一瞬でにぶーい痛みを感じた。
やっちまったことがわかった。
 


く・・・このジジイ・・・
 
 
 
どっちがジジイかはさておき、足を出した野郎を呪っても始まらない。昨日の終戦である。
歩くたびににぶく痛み、完全にビッコ引いて、それもゆっくり歩くのがやっと。今日、一番近い病院に到着するのもえらく時間かかった。
うっすらご老人のお気持ちもわかりながら、診察へ。30代かな。若い先生だった。
 

医師「あー。ちょっと腫れてるね、フットサルかな?」

オレ「ええ、まあ、振り抜いた先に固いモノがありまして・・」

医師「ここいたいね? 足の甲は細かいからね、CTとレントゲンとるよ」

オレ「ぼくの見立てでは、打撲、なんですが」

医師「靱帯も集まってるし、もちろん骨折の可能性もないわけではないから」

オレ「・・・・・・」
 
 
じ・・靱帯・・・。
しかし怪我の心配もさることながら、オレの頭は次第にひとつの想念で埋め尽くされていった。
CTスキャン、レントゲン撮影と工程が進むなか、ぼんやりと、しかしくっきりと、それは広がっていった。待合所でも「そのこと」ばかりを考えていたら、まもなくオレの名前が呼ばれた。
診察室にはすでに左足のレントゲンが張り出されている。オレも局部に目をこらした。
 

医師「見ての通り、レントゲンに陰はないし、骨折はしていない」

オレ「・・・・・・」

医師「CTスキャンで靱帯をチェックしたが、大丈夫そうだ」

オレ「よ・・よかったーーーーー」
 
 
思わず安堵した。
まるで受験生が自分の番号を見た時のように。
 

オレ「では、先生、打撲ということで?」

医師「うん。いまは痛いだろうが、痛みはじきにひく。大丈夫だよ」

オレ「では、先生、」
 
 
オレはこの時しかないと思った。
アタマにもたげたあの「想念」に片をつけるのはこの時しかないと思った。
 
 
 
 

 
 
 
 

 オレ「ブラジルには、間に合いますか?」
 
 
 
 
 
 

 
 
 
こんなにも無意味な言葉がかつてあっただろうか。
それもトモダチならまだしも、本職の外科医にいう、この意味のなさはなんだろうか?
オレはこのことをずっと考えていた。CTスキャンを受けながら、レントゲンを撮影しながら。

オレにそれができるだろうか?
オレにそれが!

まるでドフトエフスキー「罪と罰」ばりの自問だ。
今日、それを彼に言えたなら、オレは勝利者だ。
しかし確証はもてない。もてるわけがない。
ええいオレよ、打たないシュートは入らない。打て! そして、やった! やってやったのだ!
 
 
 

オレ「では、先生、ブラジルには間に合いますか?」

医師「・・・・・・」

 
 
 
木村担当医は一瞬、オレから目を外し下を向いた。
そして、笑顔でオレを見た。
 
 
 
 
 
 
 
 
医師「間に合います。大丈夫。痛みが引けば大丈夫」
 
 
 
 
 
 
 
 
なにーーーーーー! なんだこの展開ーーーーーー!
オレが読めなーーーい!
一歩も動けなーーーーーい!
 
 
 
オレ「すみません、これだけ言いたくて・・」
 
 
 
このやりとりを目撃していた看護婦さんは、どこかぎこちなくシップを貼ってくれた。
そしてほどなく診察室をあとにした。
とにかくオレは木村医師による命がけのフォローの甲斐あって、ブラジルに間に合うことができる。

木村先生、まじありがとう。(キムタク風に)

あなたの処方箋のシップ、大切に貼るわ。
そんなわけで、
ブラジルでの闘いが少しずつ、近づいている。
みなさん、いかがおすごしですか?
 
 

 
FIFA World Cup 2014 Brazil オレ公式ソング