わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

ハリウッド2024アカデミー賞

ハリウッドの祭典アカデミー賞が今年も開催された。
ちなみに一昨年2022年のメモがこちら。


上記「リバティーの国の事件」を記している。
去年は完全に見逃したのだけど、クリスロックVSウィルスミスから2年経つんだね(以下敬称略)。
毎年のように祭典を観ていると濃淡、出来不出来がはっきりとあるものだ。それで上記のブログで2年前の私はどうやら「今年(2022)はもっともつまらない」と評していることに読んで改めて驚く。

見ていない去年の様子はどうだったのだろう。
エブエブ旋風にあり作品賞ほか監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優&女優賞、編集賞の7冠という快挙を成し遂げるがその肝心な映画本篇を


自分は、途中退出している。


「なに?これに7冠を与えたのかアカデミーは」と気が遠くなった。なおその鑑賞メモは【こちら】。
そういう訳で去年度の祭典は観ていないながらも「推して知る」感はあり、どうしたものか、アカデミー賞は混迷期あるいはマンネリの停滞期のようで、それだからこそカオス的で面白い、とも言える。その面白さには「政治的」面白さも当然のようにある。去年は中国に目配せしすぎ、と感じたものだが実際エブエブに直後触れ、個人的には閉口した。

前置き長くなったが今年はどうだったろう。
Xなどで確認するに、各俳優賞5候補に対して、過去のオスカーホルダー5人がプレゼンを行う、という形式を執っていた。これは荘厳だが明らかに


ターハイ(多牌)


だったのではないか。壇上に人が多すぎる。そのトウーマッチ具合がまさに事件として顕現する。それが一夜明けて騒がれ出した「アジア軽視か」問題だったように思う。

助演男優賞ではロバート・ダウニーJrが、主演女優賞ではエマ・ストーンが、それぞれオスカー像を渡すキー・ホイ・クワン、ミシェル・ヨーを無視し白人仲間とハイタッチ、ハグしたという光景。これがシェアされ話題となった。個人的には映像を見る限り、


エマストーンはセーフ
ロバートダウニーはアウト


だとは感じるね。
なぜかというとロバートダウニーは本当に目もくれず、まるで給仕からカクテルを掠め取る様だから。
キーホイが本当に空気と化している。これはないなー、というのが個人的見解だが同時に、


めちゃくちゃいい教材


でもあるように想う。
ダウニーJr氏がここで故意に差別しようとして行動したわけではない点が「教材レベル」高しなのだ。
つまり彼の中の無意識の「潜在意識」が立ち現れただけであり、だからこそ怖いし、だからこそ根深いのが差別(あるいは階級意識)という問題ではないだろうか。恐らくは向こうの中学や高校などでも日常的光景だからこそ根深い、ということ。むろん日本のクラスでも発生するだろう、無意識の教材だ。
(そして哀しいかな、恐らく本国でそこまで話題になっていないだろうことも挙げておきたい。本気で変えたいならロビー活動していくしかないだろうし、やれることと言えば、ベストを尽くすことでしかない、多くの映画制作者たちがそうであるように。)

ここでもっと邪推を進めてみようか。アカデミー賞自体がそもそもセットアップしたことについて。
今回の「5人プレゼント方式」こそが恣意的だった可能性すらあるからだ。去年のトップはミシェルヨーとキーホイだった。そこでABCのプロデューサーが、


「アジア人に任せるのは癪だな・・
 よし、5人並ばせよう」


そうすればホワイト率も高まるだろ・・と設計したのが今回の方式だとも考えられるわけだ。
今、完全な邪推を披露している事をご承知頂きたい。だが「そうでなかった」とも言えない。オレなんかはそもそも「去年エブエブにあげすぎなのよ」と感じてしまうがしかし内容と個人的敬意は別だ。
やはり顕現化したアメリカという無意識を感じざるを得ず、とにかく個人的「教材」として今後の糧にしていくのみ。で、それよりも何よりも一番感じたのは、


みんな「我先に」とハグしようとし過ぎ


そんな自意識がわんさか動いていた。とにかくああいうややこしい場で、潜在意識が発動していたね。


オッペンハイマーが今回は7冠。
映画評論家の斉藤博昭氏がヤフー上で「監督とプロデューサーのスピーチが平板でややありきたり」な旨コメントしていたが、自分も同意見だ。キリアンマーフィーはその点立派だった。この映画はデリケートだとした上で「核兵器のある時代に我々は生きている」と言及しスピーチを締め括っている。しっかり5人と握手しているのも印象的で、他の候補者を立てることも忘れなかった。まあ人柄なんだねぇ。


キリアンマーフィーのスピーチ
日本語字幕にもできるよ。とくに1分48秒から。


一方、監督のノーランとプロデューサー陣は映画の中身には立ち入らず、終始感謝に留めるのみで、その圧倒的「物足りなさ」は個人的には感じた(監督賞の近年のベストスピーチはポンジュノだなぁ)。


クリストファーノーランのスピーチ
物足りぬ。うーん、物足りん。


オッペンハイマーは本当にどうしようかと想うよ。
観ないことには何も語れず、さりとてワーナーに金を落とすのもなんだかなぁ、であり、決心して見たとして自分が何を想い感じるかはむろん判らず、それが素晴らしい体験ならいいがさあどうだろうね。
こんなジレンマゲームが自分の中で始まって久しい。2001年の「パールハーバー」を楽しめるかどうかと、ある意味で等しいんじゃないかな。


最後になるが日本勢のみなさん。
宮崎駿作、ヴェンダース合作、ゴジラ作と3作もエントリー。まずノミネートだけでもすごいこと。
そこで「君たちはどう生きるか」と「ゴジラー1.0」が受賞。とくに「ゴジラー1.0」の視覚効果賞はマジで並みいる強豪をおさえての受賞であり、本当にすごいことだ。山崎監督と白組のみなさん、おめでとうございます。


2020 パラサイト旋風
2021 ノマドランド(監督ジャオさん)
   ユン・ヨジョン(助演女優賞
2022 ドライブマイカー(国際長篇賞)
2023 エブエブ旋風
2024「君たちはどう生きるか」「ゴジラー1.0」


確実にアジアの風は靡いている。続いていくこと、引き続きベストを尽くすこと以外ないのだ。