わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

日本代表を考える2018《前》

終戦。それから丸3日が経った。どうだろう?
みんなやっと落ち着いたかな。
みなさん見たとおり、2ー3でベルギーに惜敗。ベスト16で散った。

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もはや一気に論評は出て、そして情緒面、とくに美談に事欠かないこととなった。
予想通り、大フィーバーの中の、代表は帰国した。
事実、このベルギー戦は日本の全てを出し切っている。それはとても輝く面も問題点も
なので、この試合から多くのことが見えてくる。
だから「日本代表を考える」2018年版は《前篇》としてベルギー戦を考えたい。

ひいてはこの大会でどんなことが言えるか。
そしてこの4年間の総括を《後篇》で個人的にしたい。オレジャパンとして。

もっともW杯は国のショーケースだ。
日本チームは現時点での「日本らしさ」を全て出したと考える。情緒面ではもう、オレの言うことは全くないわけだが、冷静にジャーナリスティックに見るのも一興だ。つまり

「サッカーとしてどうだったか」

だ。——しかもこの点自体も、実は《現場レベルで大いに気づいてる》わけで、ことさら蒸し返す必要も、実は今回に限っては、ない。(ただ最後はハリルの「ハ」の字、川島の「か」の字、または「ほ」の字には触れたいぜ?)

だから、これは備忘録としての実況中継だ。

というわけで《前篇》のはじまり。
ベルギー戦だ。

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◎大前提:日本のGL突破は1勝1分1敗である

セルジオ翁が同じこと言っていて「先越されたな(そりゃ越すよな)」ということではある。しかも今、美談の嵐にあって、この批評的な声はか細く小さいが。
まず、今回の日本代表のGL突破に関する不変のデータ、それは、


1勝1分1敗


という事実だ。これをまずは冷静にとらえる必要があると思う。勝ち点は「4」。つまり

10人の南米に –––––
Aチームで勝った。
(コロンビア)

11人のアフリカに –
いい勝負をした。
セネガル

11人の欧州に –––––
Bチームで負けた。
ポーランド



ということだ。これがまずは絶対の大前提。
日本はたしかに1勝した!
が、これは開始5分から10人の南米だった。それ以上でも以下でもなく、それ以外この大会で


《勝ってない》。


だからこそベルギー戦に「日本の全てが出る」と考えた。言い訳なし問答無用で全てが出る。
だって11人の欧州相手に、日本のAチームが臨むからだ。しかもベルギー。相手として文句のつけようもなく、ノックアウトのトーナメント。
これほどの試金石もない。


11人の欧州にAチームで《     》。(ベルギー)


これが、問われていたわけだ。
情緒を抜きにして、落ち着いてどうだったか。

11人の欧州にAチームで、《負けた》。

 

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◎ボーナスステージで力を出す

ベルギー戦前、ネガティブにオレは考えていた。
Bチームだが欧州(ポーランド)に臨んで負けてるんだぜ? 日本は薄氷を踏むようにGLを、文字通りトリッキーに突破した。その幸運、その割り切れないダサさと、もう1試合できる喜びとが共存していた。
が、Aチームでポーランドより「強い欧州」にベスト16で勝てるだろうか? ーーそこは厳しいだろうと感じていた(多くの人々と同じように)。

しかし!
ベスト16からが本物のW杯とも言える。ガチのガチで肌を合わせることの貴重さは何物にも代えられない。その「貴重さへの楽しみ」があった。1試合でも多く出来ること。それは日本にとって代え難い

ボーナスステージ

だ。さらに上記通り「勝ち点4」&トリッキーに進んだチームが「いったん忘れ」てどんなサッカーを見せるのか。そこにも「成熟」が問われていた。

何に対する成熟か?

それはチーム力としたたかさへの成熟だ。
賛否ゴウゴウのマスコミやファンの論調とどう付き合いイナせるか、そして「ほんとうにそんなことは忘れて」目の前の試合に集中できるか?
炎上したアイドルが次にどう打って出るか?、くらい、その人リョク、そのチーム力が試されていた。

逆の立場にたてばわかる。
たまったもんじゃない。
そんななか、どうマネージメントできるか。

それを「成熟」と考えずになんだろう。
98年大会、ブラジルのロナウドだってノイローゼになった。
今回もおそらく、コロンビアのハメスがノイローゼでダウンしている(ケガなんて嘘だ)。大国ですら、選手の精神のマネージメントは難しい。
非難・賞賛、あらゆる劣情に耐えるのは、目の前のサッカーだけなのだ。

その目の前のサッカーをどれだけ置けるか?
ピヨらずピッチに立てるか?

なにもそこにいるのは味方だけじゃないぜ?
敵も自分たちのプランで向かってくる。
それを前にして実力を出せるか?





出したんだよなぁ。これが・・・





正直実力以上だった。
ここには、ポーランド戦から中4日プロセスでの《チームの持っていき方》がある。
その数値には出せないロッカーワークや感情コントロール成熟に、たいへん感銘をうける。
同時に、成長を感じる。だってスタメンは自分のフルスペックを出していたから。
(ただGKには私怨があるぞこのやろう)


冒頭で全てを出し切った、と言った。
それは問題点もだ。
2点取ったアト。ここが今回ベルギー戦のあまりにも重要すぎる《キモ》に思う。

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西野監督の無策を考える

西野監督は「スカウティング(研究)好き」で知られている。今回もベルギーに前半からちゃんとパッチを当ててきた。主にサイド攻撃と、対ルカク

対するベルギーは「のほほん」と入った。

たぶんほとんどスカウティングはしておらず「うちら勝てるっしょ」で試合に入った。つまりリアクション(受け身)だったし、要はナメてた。
そんななかゴラッソが2点生まれるが、とくに2点目の乾のゴールに彼らのリアクション精神が顕著に現れている。香川のシザース見物し、ほとんど甘甘プレスの中、なんともゴラッソなシュートを乾は射貫いた。
むろん名手中の名手GKクルトアから2点は本当にすごいこと。そりゃ世界が驚くし、オレも開いた口がふさがらなかった。


問題は、そのあとだ。


日本の視界から「王者」が消えたのだった。
越えるべき挑戦者であることから刹那、解放されたのだ。はっきり言う、


西野は混乱した


だってオレジャパン以下、ほとんど全ての日本人も混乱しただろうからだ(笑)。

勝ってる。
勝っちゃってる。
しかも2点!


絵空事では思い描きつつも、肉体では想定外のことが起こっていた、と指摘して誰が反論できよう?
それは西野もそうだったはずだ。(以下敬称略)

時同じく混乱したのが、マルティネスだろう。ベルギーの監督だ。
だが、そんな混乱合戦からいち早く抜け出したのは、ベルギーの指揮官の方だった。
その合図はヴェルトンゲンの機転溢れるロビング
ベルギーは、自分たちがベルギーであることを思いだした。高さのフェライニサイドアタッカーシャドリの二枚投入。それは勢いにのった、


空爆の開始だ。


ベルギーがよくやるセオリーである。
いざという時の「空爆」カードを敵は切った。
問題は、対する西野がなにも手を打たないことだった。が、無理もない。




なんのソリューションも思い浮かばないからだ。




高さ対応で切れる選手などベンチのどこにもいない。それに、おそらくそんなことすら考えつかないほど、混乱していたはずだ。もっと言おう。


西野は思考停止に陥った。


今なら「たられば」が腐るほど、ある。
原口に代え酒井高徳をシャドリにパッチして、植田槇野を入れて高さを補間する。


でもDFは、誰とかえて?


攻め、というチョイスも捨てきれずにいただろう。なんたって同点だ。
それに槇野は本番(ポーランド戦)で不合格だったし、植田を試していないのも痛恨だ。

おそらく、12人ピッチにほしかったろうさ。

思考停止のまま。きっと指揮官の体内時計は実際よりかなり遅かったはずだ。

「もう、こんな時間?」

・・やばい、やばい、でも良い案が浮かばない。




で、結局リプレイス(置き換え)のみ。




監督の決断は単純に疲れた選手のリプレイスに留まった。山口蛍とホンダの投入。
これはかなりの悪手だった。
オレジャパンもリアルタイムでやな予感がした。
——だが「じゃあてめえならどうする」って時に非常に難題だが。とにかくピヨッた決断だ。



◎本当の問題点「対話の不在」

なぜそう考えるか? ひとつ言えることは、


問題の解決になっていない



ということなんだよ。
ベルギーが示した、

我々は空爆を開始している


という相手のメッセージに「対話」していない。
対応できていないからだ。

ただ疲れた選手を替えただけ。
しかしそれは相手の立てた問いに答えていない
答えになっていないんだ

もっとも日本には陸軍と海軍はあるが、空軍は存在しない・・ってこんな話はやめようかw。


ホンダのブレ球FK


そうだねすごい。頑張ったよ。
でもそりゃ全部そうだ。今情緒で言ってない。

機能してたか?

 

という話である。山口蛍に限っては、ピッチでほとんどなにもしていないに等しい。
でこれが大事な点だが、途中投入選手が機能しないのは


当然の帰結


という側面があるということだ。

その限界を西野監督は実感したはずだ。肝心な戦局で対応できず「ただ代えてしまった」のだから。

(監督という仕事の正体はこれら強烈な難問と対話し続けるという、厳しさの中にあろう。)



ーーあらためて思いだしてほしい。
失点シーンを。


ヴェルトンゲンロビングヘッド
フェライニ空爆


ヘディングで2発だよ。

日本が完全に、20年前から脈々と続く弱点を、相手は突いたってこと。

(ね? 全て出し切ってるでしょう?)

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◎夢(悪夢)のようなカウンター

最後の最後、ベルギーは本物の牙を向いた。
完全フルスペックの、怒濤のようなカウンター。それは、本当にそれは、チャンピオンズリーグの決勝戦で見られるような、滅多には拝めない、美しいうつくしいカウンターだった。ただ唯一の問題は、





その相手が、日本だったってこと。





あの10秒間はそれくらい美しいものだった。
オレはこう思う、でしかないが、あの美しさを


よく噛みしめるしかない


と想う。
ボーナスステージで完全なサッカーのフルスペックに遭遇したんだ。文字通り、斬首だよ。


いいかい。
サムライなんだよな?


真剣の斬り合いで。
刹那「油断」したところで待ってるのは何だ?


斬首
だろうよ。


そう、示した手負いのベルギーがいた。
あれほどの完全な負けも、そうはなかろう。今は気持ちいいくらいだ(ドM?)。
ボーナスステージで、ボス級とあたり完敗したんだよ。


日本はまだまだ
挑戦者」でしかない。

挑戦すべき敵が
視界から消えた時ほど、
危うい瞬間もそうはない。




挑戦する立場と、防衛する立場には雲泥の差があるってことだ。
そしてサブを含め、総力戦ではとてもとても劣ったってこと。なによりまだまだ、敵との対話・チェスが足りないんだ。奢りや油断にもとにかく脆弱だ。

改めて繰り返すが、日本は全てを出し切った。

それは輝く部分も問題点も。

だからこそ、このベルギー戦は重要な経験となり、今後の活きた糧となるだろう。


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いやー。すっかり書き下ろしで4000字
次はようやく、今大会全体の振り返りをしたい。
が、今宵、ここまで!







▼後篇がこちら。よんでみて。





なお、前回4年前がこれね。この機会に読むといいよ!

loki.hatenablog.com