
キングオブコント2025。観たので感想を。
外出していてリアルタイムではない鑑賞でした。
今年も恒例のように書きますが、持論として
「コント」は 贅沢品 。
と考えています。漫才と違いマイクはなく、美術・照明・音効など全て自由だから。で、この自由には
人足
のかかることも意味し、音効には台本を見て音CUEを出す裏方さんが必要であり、即ち彼ら芸人だけではないマンパワーにより成立する贅沢品なのだ、ということです。で、そうした自由の上でさらに、
評価も好みも段違いに割れる
のがコントだと想う。故に「オレはこう思う」的な好みがとくに出やすく、そこが面白い点だ。
◉2025大会の総評
実のところ。恒例、ということでなんとか書いている処がある。お気づきの人もいそうだが、去年の原稿をコピペし、それを下地に使う始末だ。
なんだろうなぁ。
面白いのだ。が、不感症気味というか、自分のバイオリズム的ノイズだと思う。あと「ちょっと落ちた」点ありなかなか「相半ば」で筆が進まない、という感慨に。しかし総じて
オリジナリティは基本のキ
圧倒的参加人数の分母を持つ大会。はっきり言って「もったいない」大会で大きな意味でも贅沢だ。
そんな敬意もこめながら。各論を通して見える事もあるので、我が採点を勝手にここに発表しまーす。
◉マイ・採点と寸評!
では「マイ採点」ということで! では参ります。
(以下、えらそーに敬称略、ね!)
0.オープニングの短尺 1万点
番組開始 14分後には一組目の演目が開始していた。この短尺演出を大いに評価する。ダラダラせずサクッと始める。極めて大切なことだ。MCについてはのちに触れることになると思う。構成的にもう一つ言うと「予選、色んなチームのドキュメントと顔」というM1からあるいわゆる「王道定食映像」も、その置き所は決勝審査(最後の組の採点発表)前、かつ「あっさり」。そういう組み替え・マンネリ打破へのチャレンジも評価したい。
1.ロングコートダディ 94
2年連続トップ。否定人(地底人)。「ほとんどの会話否定的に入ってくるでしょ」「息をするように否定する」「自信がないけどプライドが高い、ってお母さんが言ってた」笑。クリティカル。ファンタジー × 世相クリティカル。序盤はセリフを巻き、終盤に時間を作っていた。暗転はダイジェストに使うその洒脱さ。1組目でこの点数に。終わってみればもっと高い。
2.や団 93
最後の餃子をタダ喰いする。去年同様もう一つみたい、と思わせた。ライオンズの帽子はどうなるかわからず観客が静まりかえる、まさにプロット自体に集中する瞬間。賭け狂い。や団特有のバタ臭さはトレードマークであとは好みだし、年々熟し芸が枯れてきている。(芸が枯れる=古来よりほめことば)
3.ファイヤーサンダー 92
「殺人で復帰」謝罪するタレント芸人「殺すぞ!」。空想に頼るので、補完の負荷があるがえぐるテーマでいってロングコートより一つ上。芸術点で一つ下、と評価。もうこういう時代。ロングコートダディやこのファイヤーサンダーのようにどんどん踏み込んだネタが欲しいしそうでないと点があがらない。稚拙な面(たとえば冒頭のSEがわりと素直、とか)あるがとにかく踏み込みを評価。Vを観る、という無音オフ空間の味わいもいい。
4.青色1号 94
社内喫煙所。オーソドックスだがシアターのうまさが光る。はじめの「おつかれ」のあと、もう一つ「おつかれ」という細やかさ。上司の「こうよがりたい」を言葉でなくアクションで注文するおかしみ。ケース1とお手本としてのケース2。ケース2の方が演者として少し落ちるようだったし、最後のオチ方(受身姿勢ロジック)が素直すぎてもったいなし。とにかくシアターのうまさを高く評価。
5.レインボー 95
女芸人との合コン。女形・池田直人がすごく引っ張るし双方達者。オーソドックスだし何も起きてないが目が離せない。「女芸人・・」「女芸人・・」ってこれ、そこまで効いてなかったが本人やりたかったんだろうな。全肯定の時代も打算し誰も不幸にしないハッピーコント。1回戦最高得点とした。
6.元祖いちごちゃん 90
ハイターを試飲。アングラ。いや、これはKOC、TBSのキュレーション力を高く評価したい。こういうコンビを選び提示する、その姿勢。フジにはできない芸当。「安心して採点できる枠」というより、採点する系ではないコンビ。世界の多様性と、TBSのキュレーションを評し90点。
7.うるとらブギーズ 87
父との喧嘩。ミュージシャンか医者か。今とちったの?がネタ。し・か・し。前々回覇者サルゴリラともろカブリ。手法・発想のカブリは厳しく比較したい。設定に鮮度もなくこれでも相当甘い評点。ダメ。
8.しずる 90
B’z とアウトレイジ。車を降りる前にセリフがあるのは佳かった。表情芸が枯れてて楽しい。しずるはどうしても「作品」にしたいコンビなんだよな。楽しいが曲モノというジャンルは存在し、コロチキが卓球ネタで覇者となっている。
9.トム・ブラウン 85
今回の「安心して採点できる枠」。犬のおでき。単独公演ならいいが、準決で敗退したチームは悔しいだろうね。オレはちょっと頂けなかった。さっき褒めたTBSのキュレーション力の言葉を返してくれ。笑
10.ベルナルド 85
写真館お見合い用写真。シュール系。ですが、じゃあこの人はどう写真館に入ったんだい? 受付は誰? 要するにコントとしてのコント。カメラと人間のハーフにリアリティラインは組まれていない。さっき褒めたTBSのキュレーション力を返してくれ。ちょっと落ちるなぁ。
◉1回戦をおえて
今年はわかりやすく前半と後半で真っ二つ。
前半5組:令和のコント
後半5組:平成のコント
という感想。もっと区分けするならば、
・ロングコートダディ
・ファイヤーサンダー
令和という「時代」と闘っている
________________
・や団
・青色一号
・レインボー
令和の「客」に足るシアター技術
________________
後半5組:平成のコント
勝手に厳しく、えらそーに感慨を申せばこう感じた。Mー1にいつも「大きな川が流れている」ように、今回ばっくりと分かつ「大きな川」の存在があり、順番はくじのアヤだが後半は消沈した。
むろん番組編成プロデューサーは「シアター系」と「インパクト系」「多様性」など差配したはずだが、そのコンビないしトリオの「思想性」「風刺性・諧謔」のレベルは否応にも眼前と現れる。「時代背負ってない」とやはり見応えは減ってしまう、個人的にはね。(「気にせず面白きゃいいでしょ」と反感もあるでしょうが、面白さ・見応えに時の流れは取り除けるのだろうか。)
前半5組は2025年に相応しい、と感じ甲乙付けがたく、私はすっかり評点トラブルに見舞われた。
そんなこんなで、決勝は
ロングコートダディ
や団
レインボー
の三組による、決勝でした。
◉決勝総評
優勝は「ロングコートダディ」に輝きます。が!
構わずマイ採点コーナー。
■ レインボー 94
ヒルズ族の再現性!笑 デカいAIR! レインボーの堅さ・安定感。この日だけでもう充分ファンが激増したはず。優勝なくとも今大会の成功者。
■ や団 90
茄子の煮浸し漬け。「気が滅入るから、帰ってくれよ」シニカル。ファッキンコント。くそったれ暴言構文連発のきもちよさ。これは長尺の公演用なんだろうな。手品が1と2で変わって見えるという仕掛け。だが「空想の空想」をコネる感はあり直接的な笑いに結びついたかどうか。決勝にあげる、という判断は彼らだが、その選択はミスった。・・と思ったが、審査員とは反れた。
■ ロングコートダディ 94
暗転明け、ベンチに佇み泣いてる警官で「獲った」と思った。そのルックのよさ。それに設定が1回戦と違うだけで優勝だ。なぜならレインボーもや団も「男女の夜の出会い」に「居酒屋」と、シチュエーションが1回戦と変化が乏しかったから。バリエーションという点で、もう加点。跳ね方は弱いように感じたが今回は「言語化」を装備。レインボーに94をつけたのでそれ以下ではない、という評価!
結果は、ロングコートダディの優勝。
これはもう満場一致。彼らは「遅いほどでようやく」今年獲ったと言えましょう。しかしそうは言えても、毎年質の高いコントを示し続けるのがどれほどのことか。おめでとう! ロングコートダディ!
◉信頼できる審査員
今年もKOCは審査員に本当に信頼がおける、と思った。彼らはこの大会の覇者というだけでなく、自分の笑いへのスタンスが確立していてそれでいてオーバーオールに俯瞰できるから、コメントにもクリティクスと優しさがある。点数の付け方にも堂々とした自身の見解があり、観ていてきもちいい。
◉内面化する時代性
コンプライアンス、という言葉を見聞きするようになってどれくらい経っただろうか。ここ十年、と考えるとその十年ですっかり「コンプラ・イズム」が内面化した、と思える。これは良くも、悪くも。
それを如実に物語るのがMC の浜田氏だ。
ダウンタウン自体のネタではなく「回し・いじり」の際の彼らの手法は「どつく・体を張る」であり、もうそのメソッドが全く時代にフィットしていない、ということが手にとるように分かる。
むろん去年も一昨年もその足音は近づいていたし、本人が一番気付いている筈だがとにかく痛感する。
とても居心地悪く、やりづらそうなのが印象的だ。
で。この世相はむろん「笑い」の潮流に直結する。
それすら新しい提言でもなんでもないが。
どの大会もその過敏な時代の風を感じながら(あるいは無視しながら)各人が組み上げる。その社会との対話(あるいは無視)こそが面白いのだ。それ自体が態度だから。そして大前提として「てれび」という大箱。昨今では「オールドメディア」とも称されるがしかし——
単独公演などフィジカルではない
YouTubeなどファンダムエコーではない
その昔ながらのマス、電気箱での交配。だからこそ色々と感じるし、情報量が膨大で面白いのだ。
今回はこの感想が一番かも知れない。
テレビという大箱のなかで、KOCという大会のなかで闘うロングコートダディが美しいのだ。
では!