前回、前々回とカメラの話だったがひきつづき。
露出を改めて勉強し直してて、感覚的なことや不明点がパッとわかったりした。今日はその辺です。
◉すべてはミッドグレーだ。
ミッドグレー、中間グレー、18%グレー。
呼び名は幾つかあるが結局同じことを言っていて映像信号の中間に位置する「18%グレー」。
こいつの存在がようやく、わかった。
そして、これは出発点だ、と。
で、わかると全てのことが判るようになる。
ヒストグラムやフォルスカラー、露出のSTOP数などより精度高く掴めてくる。ゴリッゴリのDP(撮影監督)ではないがそれなり以上には撮影に精通する身として、今まで感覚でやってきたものをちゃんと落とし込めるようにもなり、なにより「知るという感動」がある。勉強はするにこしたことがないね!
SONY S-Log3 IRE 41% HP
PANA V-Log IRE 42% HP
CANON C-Log IRE 32.8% HP
FUJI F-Log IRE 46% HP
NIKON N-Log IRE 35% HP
注:現在キャノンは「Log3」まで出ています。参照
これらは各社のHPに行けば手に入る、というかちゃんと説明書に載っている数値であり、今回は各社謹製のデータを参照した(上記HPね)。ソニーなら明るさの単位「IRE 41%」のとき、センサーが集光する【中間地点】(=18%グレー)ですよ、という事だ。
は?
だよね。わかるわかる。笑
だがマニアック記事なのでこのまま進めるが(笑)、まず「IRE」というのは・・
IRE
テレビの映像信号を基準に、完全な黒を0%、完全な白を100%として波形モニターに表示する時の明るさの単位
ということで100%までで示す明るさの単位だ。
この中間地点。これを把握しておくのが肝要で、その中間地点が各社様々で、ソニーなら「IRE 41%」が中間値なのである。もう一度表を出しておきます。
SONY S-Log3 IRE 41% HP
PANA V-Log IRE 42% HP
CANON C-Log IRE 32.8% HP
FUJI F-Log IRE 46% HP
NIKON N-Log IRE 35% HP
注:現在キャノンは「Log3」まで出ています。参照
◉中間なのに50%じゃない?
中間なのになんで50%IRE じゃないの? で!
中間なのになんで50%グレーじゃないのさ!?
だ・よ・ね、と。
しかしながらどうやら違う。感覚的には直線グラフをイメージしがちだが、光の透過率はそう単純なものではない、と理解する必要があって、その理解で十分だと想う、要は「そういうもんだ」、と。笑

出典:ソニー
参考に上記はソニーの図。
縦軸「Video Level」というのは「IRE」の事を言っていて、0〜100%を基準とする。
で、横軸はほら!
「0」地点が「18%グレー」になっていることに注目して欲しい。そして左右に「−8」から「8」となっているでしょ? 英語の通り「0を基準とした露出のSTOP数」が上下に広がっているよ、というサインだ。まさに中心が18%グレー。
で、このグラフのメインである「曲線」こそが、ソニーならソニーの(各社それぞれ設定された)「ガンマカーブ」というもので「直線的な代物ではないこと」に注目すれば、定量的な50%の値が中間ではない、という理解につながると想う。グラフの始点(左の先端・暗い側)がジト〜と粘る分、50%には届かない値に「中間」がくる、ということだね。
IREの度合いはわかったけど、グレーは?
なんでグレーは50%グレーじゃないの?
と訊かれたら、そもそもこの18という数値は正確には「反射率が18%」ということがまず一つ。
しかしもっと良い答えは、人間の目はそういうもの、という解答になるんだと想う。
人間の目も曲線を描くように、暗い部分をジト〜と識別・スキャンできるように作られており、明るい部分はずいぶん雑に見ている(識別・スキャニングしている)・・ものなんだそうだ。
つまり人間の目は黒から白の間、反射率わずか18%のグレーに向かうまでに「瞳」という機能の実に《半分の性能を駆使している》という理解でイイと思う。それ程人間は暗部を見分けられるわけだ。
もっと良い説明がこちらにありました。実際の50%グレーがいかに暗いものか、も掲載されています。
というわけでようやく!
・18%グレー & 各社IRE指定 が中間
・そこが明暗/露出ストップ数の基準
となる。ここまでが大きな、おおきな前提。
で! その中間地点を撮影上で掴む作業になるわけだが、その把握方法は大きく2通りある。
◉グレーカード+ゼブラで出す

写真、色が微妙に違うがまあ Amazon 的愛嬌ということで。
世の中にこういう「ミッドグレー(18%グレー)」の照明アクセサリーがなぜ存在するか? それはホワイトバランスを取る為ではなく、こんなカードやボードで中間露出を特定する為に(本来は)在る。
(ホワイトは上写真の「白」パートで採るのが本来で、グレーカードでも採るには採れるが一応邪道となる)
カメラの前、人物がグレーカードをもったり、あるいは立て掛けたりして明かりを固めていく。
そこでカメラ側で必要となるのが大きく2通りあって、一つは「ゼブラパターンを使う」やり方だ。
◉ゼブラパターンの隠れた真髄
「ゼブラパターン」という機能。
80%ゼブラ、90%ゼブラなど昔っからある機能で映像にシマシマがでるものだ。あるよね?
これは「白飛び危険ですよ〜」の合図で「80%ゼブラ」とは「IRE 80%」のことだ。シマシマにすることで危険水域を可視化する機能。・・というのが通例。
で、このゼブラ= IRE であることを活用する。
撮影のメインとなる明かりの中グレーカードを掲げ、カメラ側で「ゼブラの値」を指定する方法だ。
ゼブラの出現をソニーなら「IRE 41%」に、キャノンなら「IRE 32.8%」前後に設定してあげ、照明やカメラの露出をアゲサゲ。ゼブラのシマシマがグレーカードに「当たる」ようになれば、その空間露出の中間位置が決まった事になる。即ち、これが本来の意味での「適正露出」となる。
なぜなら中間なので「露出オーバー」と「露出不足」をほぼ同じ段ずつ所有できることになるからだ。
(物語的に適正かどうか、は今は置いておく。)
「ゼブラって白飛び警戒だけだと思ってたー!」
とーー。私もずっとそう思ってた。
でもね、あるんだよ。各社とも。カスタム設定が。
ゼブラパターンが出る数値を設定できるんだ。カスタムでソニーなら41%に、パナなら42%など、各社ちゃーんとゼブラ数値をカスタムできるようになってるもんなんだわ。すごいよね。
◉フォルスカラーを使うやり方
もう一つのやり方がグレーカードと、モニターには定番の「False color」という機能を使う方法。
出典:Premium Beat
映る映像をこうしたどぎついカラーで示すモニター機能の一つだが、明るさの数値を視覚的に確認する事ができる。例えば色の配置は以下のようにーー
設定されていたりする。例えばパナ(LUMIX)の中間は「IRE 42%」だった事で例えるなら、上の表では「ブライトパープル」。この明るい紫が、映像上の「グレーカード」に当たるよう照明と露出をアゲサゲすれば、現場で中間露出を採ることができるわけだ。
これが適正露出を出す二つ目のやり方、となる。
なお、これらは現場でキャプチャーしておけば、編集時にリファレンスできることは言うまでもない。
もっとカラーマッチさせたければ専門的なアクセサリーはいくらでもある。高いが、価値は大きい。
このボードだけで2万ギルド、オーバー。
これなんて、420トランプダラー。
高価な理由としては塗料が顔料ではなく「グラファイト」で色あせと蛍光反応を防いでいる点と、正確な色に着色された製品でないと意味を成さない点が挙げられるでしょう(って高いさね)
◉False Color について注意点
フォルスカラーに話を戻します。
この機能をカメラに組み込んでいるのは、キャノン、BM社、シグマ、最近パナ(LUMIX)が始めたって処で、使う側にしても(昔からあるのに)そこまで浸透はしていない。が、これから間違いなく需要が高まるのがフォルスカラーの考え方だろう。
しかしその前に! このフォルスカラーには大きな大きな大前提となる認識が必要だ。それはーー
統一規格が存在しない
ということだったりする。
フォルスカラー、という機能は昔からあるが、各社、まじでバラバラなんだ。モニター各社が好き勝手に色を指定して良い・・とまでは言わないが、IRE に対する配色・配分に統一規格はなく、モニターやカメラ固有のものとなる点は注意が必要なのさ。

たとえば上がブラックマジック社のカメラが示すフォルスカラーで、下がマンハッタンLCD社のモニターが出すフォルスカラーだ。違うでしょ? 各社若干違うので製品によって使い勝手が異なる。
◉EL ZONE という可能性
で、最近注目されているのが、このフォルスカラーの考えをもっと視覚的で合理的にし、かつ統一規格とした「EL Zone」というシステムだ。
上のパレットが「EL Zone」。すごく合理的だ。
「18%グレー」をまさに「グレー」として中間に据え、露出が1絞りアガル度に色が黄色から赤くなっていき、1絞りサガル度に明るい緑、青、紫、黒へと変化する。
出典: EL Zone System
GIF を貼ってしまった。うざかったらすみません。
しかし見た目にもカラフルで、1STOP毎に変わるので判りやすく、なにより露出計すら要らず「助手キラー」なこのEL Zone システム。素晴らしいでしょ。
この帽子のおじさまがエド・ラックマン(頭文字のELを採っている)という提唱者でありハリウッドの撮影監督である。・・いや、ハリウッドというには余りにもインディーな方で「東京画」や「レスザンゼロ」の撮影をしており、もっとも2015年の「キャロル」は本当に撮影が素晴らしいのでお薦めだ。
◉EL ZONE というビジネス性
しかし問題がないわけではなく、こんな合理的な偽色が定着していないのにも理由がある。それはーー
登録商標・特許もの
だからだ。
現に「EL Zone System」は「TM」を付けなければならない商標であり、この偽色を組み込むには使用料が掛かる。ーーまあ当然と言えば当然だが、実際最近「EL Zone System」を使えるようになった、
Small HD
ATOMOS
この2社の当該モニターは以前の型番より高額だ。それは昨今の物価高だけでなく、このシステム使用料も影響している、と考えて邪推ではなかろう。最近ソニーの「Venice 2」にも「EL Zone」を搭載するというニュースもあり、注目は注目なんだよね。
(なお、エドラックマンさんは提唱者ってだけで、この使用料は規格の社長のフトコロに行くんだろうな、とは思うのみ。)
◉まとめ
・・というわけで5千字オーバー。2記事分書き殴ってしまったが、ほぼ自分への備忘録だ。
なんのこっちゃ、な人も多かろうが悪しからず。今回ほとほと改めて恐れ入ったのが
SONY S-Log3 IRE 41% HP
PANA V-Log IRE 42% HP
CANON C-Log IRE 32.8% HP
FUJI F-Log IRE 46% HP
NIKON N-Log IRE 35% HP
「これ全て、
日本の会社じゃん・・」
という極致に改めて気付かされた事。凄いことだ。
だって冷静に考えてもみて欲しい。
「Log」という複雑な映像圧縮方法を光学技術的に網羅している、ということなのだから。
それって冷静に考えて人間の叡智でしょ?
そのうえ技術の粋であるレンズまで開発してるんですよ。どれだけ世界中を幸せにしたんだろうか、これらの日本の会社は。
そうして「全て説明書に書いてある」という点もクールな「理系魂」「光学魂」を感じざるを得ず、また改めて撮影とカメラの奥深さを感じるのみだった。
(物語的に適正かどうか、は今は置いておく)
と途中で書いたがこれもまた本心だ。
(これまた長くなるので割愛するけれど。)
しかし「適正露出」がわかればより一層「ハイキーでいくか、ローキーに振るか」という映像選択を、感覚のみならず地に足をつけ《デザインする》事につながるのだ。ーーそしてなにより、こうした理解が彼らの「理系魂」「光学魂」へのせめてもの「礼儀」であり、また挑戦ともなるだろう。
以上、スキモンに捧げます。それでは!
____________________
追伸:
18%グレーのIRE 設定数値。
これは「Log」と「普通の撮影」では変わってきます。上記あくまで「Log」上の数値です。念のため!
追伸2:
各社ログ IRE 指定は各社の設計思想も見えて面白い。
SONY S-Log3 IRE 41% HP
PANA V-Log IRE 42% HP
CANON C-Log IRE 32.8% HP
FUJI F-Log IRE 46% HP
NIKON N-Log IRE 35% HP
なおキャノンの「Canon Log/C-Log」は現在3まで出ているが、2と3の18%グレー出力の値がメーカーページから出てこず、ちょっと古い「Canon Log」の数値で贈っています。カーブ自体はこんなかんじ。一応情報だけお伝えすると「C-Log3」では「IRE 35%」が中間グレーとなります。
出典:キャノン