わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

α9III 研究録

前回α9III は「じゃじゃ馬」だと書きました。
今回はその α9III について、書きたいと思います。
引き続き、マニアックボンバーです。が、以下すべて机上の感慨。実機を触って語っていません。
それでは参りましょう。


◉夢のグローバルシャッター機
夢の、・・いや。「悲願の」である。

CCD時代のグローバルシャッターから、CMOSのローリングシャッター期に移行してこの方、グローバルシャッター機の到来は本当に悲願だったろう。
そんな現実がα9III として我々の前にある。


◉わがグローバルシャッター記
本当に悲願だよ。
みなさん「AXIOM」というプロジェクトをご存じだろうか(って、知らなくて当然なんだけど)。
2010年代、グローバルシャッター機の実現にむけて発足した欧州のベンチャーだった。イスラエルのセンサー「CMV12000」を搭載只今ベータ版作成中!・・を最後にたぶん力尽きたプロジェクト

今はほぼ解散状態だろうが要するに、当時そこに熱視線を送るほど、グローバルシャッター機の実現を心待ちにしていたのだ。そうして繰り返すが、ソニーが実現したのだ!
これは事件であり、素晴らしい前進を示した。
そ・れ・が、α9III だ!





で。下火なんだ。


発売から1年・・。
世間は、映像業界は全然盛り上がってない!
(むろん写真の世界では動画ほど下火ではないが)


◉なぜ α9III は下火なのか
そう。下火なんだよ、まじで。

このフラグシップ機の人気が下火。動画系ユーチューバーなんてサーッと音を立てて引いてったね。



で、それはなぜか。



暗所性能 なんだろうよ。
グローバルシャッターを採用しているため、という他ないが、ノイズは乗るカメラなのである。
故に「ログとLUTが好きですきでしかたない」昨今の(若い)動画系ユーチューバーにとっては「映え」ないんだろうね。サーッと引いてった。


◉α9III は「プロファイル」一択
S-Log3 などログ撮影ではISOが「2000」スタートになるα9III。もうそれだけでガビガビにノイズは乗る仕様となっており、敬遠されている。つまり、


プロファイル撮影ほぼ一択


のカメラであり、カメラのISOを極力抑えて撮る必要がある。これは実はNDフィルターが不要、という本来の撮り方に戻るだけ。と言えるのだが、LOG信者たちには不評なんだろうねぇ。

もっともダイナミックレンジがかわる、とは言える。
ログ撮影では上下7段ずつ程光量を許容するが、プロファイルだとせいぜい4〜5段、というところだ。

つまり8〜10ストップが言って限度であり、その範囲内に光量を収めなければならない。これは室内の設計では問題ないが、屋外は割り切りが必要となる。


◉S-Cinetone の何とも言えなさ
次にプロファイルの話。ログがダメならソニー製のプロファイルを選ぶ、ということになりますね。
そこでソニーのプロファイルには「Sシネトーン」というお誂え設定があるが、さてどうだろう。


一時期いいな、と想ったが今は・・・


・・・、である。
なんだろうなあ。もちろん悪くなくうまく言えないが、余りにもソニーの個性を焼き付けられている気がし、編集時にも動かしづらい。編集の自由度で言ってもさほど面白くはないのだ。このプロファイル問題は大きくあるだろうね。


◉話はどんどん α9III から離れる
そうなんですよ。結局ログから離れると「ピクチャープロファイル」の話になり、プロファイルはプロファイルでディープな具体的なプリセットの話になり、なによりソニーの仕様を探る旅になってしまう。

ダイナミックレンジだと何がいいか。「HLG」系がいいのか「S-Cinetone」をいじった方がいいのか。
ブラックガンマがどうでディテール・彩度をどうして、などの世界になる。むろんこれらはレンジ以外は Sーlog だろうと同じだし編集でも設定し直せるが、納得するには事前に検証が当然必要なのだった。

この面倒な点が、人気下火の結局の理由だろう。


ソニーの、PP に込めた想い
ちなみに脱線すると。
プロファイルの旅で言えば PP05、06の「Cine」。これは往年、2000年代のデジタルシネマ機「F35」のガンマ特性を反映しているとのことだ。つまりPP(ピクチャープロファイル)シリーズとは



ソニーの、デジタル史の足跡



が刻まれている、とも言えるのだ。
きっとPP02 の「Still」にはミノルタ時代のアナログ設定が反映しているのかもしれない・・と想うのはいささかロマンチックに過ぎるだろうか——。



HDCAM-SR 総合カタログ
往年のCineAlta F35



まあそんなわけでラストのPP11 を飾るのが「S-Cinetone」だが、それは先ほどの通り、なんとも言えん感想なのである。笑。イイときはイイが。

で、そんなこんなで飽くまで「机上の空論」だが、「これがいいんじゃないの?」仮説を挙げる。


◉α9III は「HLG3」一択か
暫定。α9III は「HLG3」一択かもしれない。

PP内にひっそりと生息する「HLG3」というプロファイル・・。ログ以前の、8Bit 4:2:0 時代の遺構のようなHLG系統・・。しかし!これこそが光り輝き、陽の目をみるのが本機なのかもしれない。

・ISO は最小値「250」絶対固定
 (次点スポットは「800」。この二つのみ!)
・プロファイルは「HLG3
・10ストップ内に全て収めること!
・逆に飛ばす所・潰れる所は事前に決定せよ!



HLG3はダイナミックレンジも稼げ、これでSシネトーンの個性から脱却し、編集上で比較的トーンをいじれるようにもなるはずだ。
その際 ISO は最小値固定。ノイズを徹底排除する。

カラースペースはわからん。指定では「BT2020」という規格だが、結局多くの視聴環境が「BT709」という色域なのだからね。この辺も要検証なんだろう。
ライティングは当然ログよりシビアだ。ただ「見たまんま出る」と想えば気も楽ってもんさ!


◉じゃじゃ馬の正体
そろそろまとめよう。

α9III が「じゃじゃ馬」なのではなく
我々の好み・欲望こそが「じゃじゃ馬」なのだ



とこのブログで結論づけたい。
PP で撮ればいいだけの話
なのである。それを臆する、その心の揺らぎこそ見つめるべき事なのだ。

いずれにせよ、撮った時点で画はほぼ決まる。
撮りたい画がローキーなのかハイキーなのか。そして何を立たせ、何を捨てるのか。ということ。
当然の行為を思い出させてくれ、その上で α9III はグローバルシャッターの威力を発揮するのだ。
まさに、シネカメラとしての覚悟のいる個体なのさ。


◉で、さいごはミーの話
あとは予算だなぁ・・。2台体制だし・・
検証のため事前に借りなきゃだし・・ホント、シナリオ上「カメラを振りこむ!」とこだけなんだよなぁ。ぬーむ・・(結局FX3系を採用して撮影しててもみなさんガッカリしないでね。)


ソダーバーグの新作「プレゼンス」が《全編 α9III 撮影》の作品で観に行きたかったのですが、終わってしまったんだ。正確には、最後日に観に行こうとしたが降りる駅を間違え、上映時間に間に合わず諦めた!(なんなんだそれ。ラーメン喰って帰ったよ)
サブスクにきたら真っ先に見よう! では!




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追伸:

FX3II」の噂が出始め今年発売が予想されています。噂では α9III のセンサーになりそうだ、と。

しかしどうでしょう

このブログの検証に従えば、人気はでないはず。笑
オレは大注目だし大歓迎だけどね。しかし他のみなさんが「PP 撮影に満足するか?」は未知数だ。
で、ソニーが高感度耐性を優先しローリングシャッターのママ更新したとしても、なんら驚かない。
さあどうなるでしょう。