わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

謎めいた男の一日

●とある日の電車にて
私は電車の中、比較的空いていて座って新書を読んでいた。すると本を読むその視界前方、前の席にスーツの男性が座ったのがわかった。その男性はドア付近にいて空いていたので腰掛けたのだと私は瞬時に判断した。そうして新書本の隙から何気なく前方にピントを合わせた時、ソレがわかった。


ズボンに穴が空いている・・


スーツ、いや、正確には上下はセットではなく、その男性のひだり太腿の箇所がすれて肌が見えている。それは狙いとしての穴あきジーンズなどではない!

フッと本から視界をあげその男性を見た。
ワイシャツは着ているが裾はでており、私は顔も拝見せざるを得なかったが、こうなるとやはりどこか


労務的ナニカ


を感じる風貌に、その男性は見えたのだった。
私はすぐさま隣に座る学生を視ることも忘れなかった。彼は、いや、彼も、と言っておくがスマホに落としていた視線がふと隣人の足に向かい、その後彼なりに工夫して隣人の顔を見ようとした行為を私は見逃してはいない。
人間は哀しいもので、こうした段階を(丁寧に)踏むと今度は、臭覚を研ぎ澄ますものだ。私も例に漏れず鼻をくんくんさせてしまったが、へんな臭いは感じなかった。そうして程なく、その男性は目的の駅で下車して私の視界からも消えていった。

で、今日の本題にうつる。
今回一体何が言いたいのか、と言うと一つには

ズボンに穴さえ空いていなかったらよかった

ということがある。
わずかにそれだけでスキャニングせざるを得なかったという、この事実を一つには言いたい。
それだけで、この男性は損をしているからだ。


●全ては自分が決めている
一見ぱっと見は至って普通。しかし決定的なナニカが足りてない、そんな「イチ部分」がある——。
これはなにもその男性に限ったことではない、と私は想う。その決定的なナニカは人によっては言葉かも知れないし、こういった身なりかもしれない。しかしそれらを他人事に想うほど私は鈍感ではなく「頭隠して尻隠さず」ということわざをしみじみ考えるのだ。

しかし厳しく言えば全ては自分が決めているのだ。
この人だって、人になにか想われることをみずから「仕向けている」とも言えるのだ。穴あきのスラックスを選ばなかった道もあったはずだからである。無意識的に潜在的に、彼は選び採っているのだ。
「頭隠して尻隠さず」とは実は本望で、尻を隠さないことを「選んだ」とも言えるのだ。


●あとは自由に考える
・・というのがまあ理知的に詰め、左脳だけで考えた善意の限界という奴で、これからはフリーハンドにいく。こっからがクリエイティブ脳というか大切なホットルッキングな? こう考えよう。



ひだり太腿に穴が空くナニカが起こった



この人は「労務的」ポジションなどではなく



政府要人の、影のSPである!




今日大変なことが起こり、今、目の前に太腿に穴開いた状態で座っているのだ。この男はそれも!



今朝マッパ(真っ裸)で
倉庫で縛られ気を失っていた



そんな始まりからの今、電車なのだ!
なんてスペクタクルな一日だろうか!
舞台は都知事選の裏工作! 彼は陰謀に気づく——それも敵こそ綻び「頭隠して尻隠せず」見抜きそこを突いた彼は!陰謀を未然に葬ったぁ!しかも!ウラの敵は政府要人その人だった——! 彼は離婚寸前奥さんの誕生日ケーキも買えず、なんとか電車で帰宅した、それも誰の服かわからん上下別々のスーツを奪い着て、だ!

こう考えて思い出す彼の風貌の方がよっぽど美しいことはまず、まちがいないのだ。