喧騒とカオスのワールドカップで死し、もう二度と戻らないチームに「日本」の名も刻まれた。
ベスト8が決まり、24の国が大会を旅立った。
どんなにイイチームも、どんなに良くないチームも祭がおわれば解散する。「惜しかった」「もう少しできた」そのような想念をいつだって(世界中の国々が)抱えながら、解散する運命にある。
なにが、どんなことが
足りないことだったろう?
4年後はまた全く新たなチームが現れる。が、だからこそくり返す可能性が高い失敗を「つぶす」という行為がいつだって肝要だ、と考える。
これらの振り返りはあとあと個人的に「右往左往せず観戦する」ことにずいぶんと役立っている。
前置きは長くなったが今大会の「日本代表を考える2022」を始めます。
◉といいつつ成功を考える
しかし今回はなんといっても
歴代最強の功績
に充ちている。今までドイツに勝ったことはあるだろうか? スペインに勝ったことは?
というか、ヨーロッパにどれだけ勝ったことが?
それも1点先取され逆転した過去を知らない。
クロアチア 1−0 日本 (1998)
ベルギー 2−2 日本 (2002)
ロシア 0−1 日本 (2002)
クロアチア 0−0 日本 (2006)
オランダ 1−0 日本 (2010)
デンマーク 1−3 日本 (2010)
ギリシャ 0−0 日本 (2014)
ポーランド 1−0 日本 (2018)
ベルギー 3−2 日本 (2018)
これが前回大会までの欧州との対戦の歴史だ。
二十年でわずか2勝だ。それもロシアと当時のデンマークという中堅国からの勝利だけだったのだ。
ドイツに勝った夜。
日本代表がそのまま2戦残して成田空港に帰ってきたとしても誰も文句を言わなかっただろう。
それだけでなくスペインにも勝ったんだから。
ベスト16でも前回ロシア大会準優勝国クロアチアを相手に互角の試合をした。
それも1点先取した、という事実。
悲願のベスト8まであと一歩のところまでいった実績もなにもかも、完全なる堂々とした功績だ。
◉が、失敗をみていこう
しかしコスタリカ戦もそうだが、
「負けにこそ未来への種がある」
プロ野球の名将、故野村監督も言っている
勝ちにふしぎの勝ちあり。
負けにふしぎの負けなし。
クロアチア戦は未来へのベンチマークに充ちている。
私はそう考える。クロアチア戦を俯瞰してみよう。
◉パルプンテなきクロアチア戦
まず想念で言えばひとこと
総力不足
だった。これはもう皆さんもそう考えるはずだ。
コスタリカ戦のような「消化不良」ではなく、総力で負けた。総力負けだから世論もずいぶん大人しく戦後清々しい、とも言えるはず。(強いて言えばPKだがこれはのちに触れます。)
細部として足りなかったのは「駒」。要するにクロアチア戦は総力戦における駒不足に陥った。
もちろん選手層で言えば過去イチだった。
しかし残酷にもその上で、GLからかぞえ4試合目ではジリジリと駒不足は進行していた。
とくに左サイドバックの不足はラストまで響いた。
(三苫のことではなく、専属専門職としてのサイドバックの話ね。中山は本当に欲しかった・・)
三苫に至っても「彼がジョーカー」であることはGL3試合で研究され、クロアチアの監督ダリッチは三苫の登場にすぐにバシャリッチ選手というパッチを当てた。駒不足は堂安がスタメンということにも現れている。つまり、
奇襲の効かないジャパン
になっていた。図らずも堂安先発のコスタリカ戦・クロアチア戦ともに敗れたが、戦力の2段ロケットという面で言えば妥当で、総じて「駒不足」に陥ったと言えるだろう。
イフもしもはある。結果論だが一つだけしたい。
この試合調子の良い鎌田を下げたのは謎だった。
彼はEL(ヨーロッパリーグ)決勝で120分戦える体力と気力もあり、PK戦も蹴り優勝した過去を持つ。ゲーム上効いていたが謎の交代。もっともクロアチアの中盤は4−3−3のお手本のように固く、サイドから展開したいのはわかる。が、
後半30分/中盤は《遠藤と守田》のみ
という時間が10分ほど続く。
鎌田にかえて右の酒井に代えたからだが、攻撃にでるなら(ものすごく良かったが)谷口にかえて「攻撃陣」という流れの終盤もあったはずだ。
4バックで撃って出ることは考えなかったのか?
もう中盤に厚みをもたらす鎌田は居ず、延長時の守田ー田中の交代もポジションのローテで終わった。
最後のさいごで保守に走った森保ジャパン。もっとも120分の対決を見越してもいたろう。だが、
ベスト16
クロアチア 1—1 デンマーク 120分
(PK3−2)
準々決勝
クロアチア 2−2 ロシア 120分
(PK4−3)
準決勝
クロアチア 2ー1 イングランド 120分
上記は前回ロシア大会のクロアチアの成績だ。
が、120分x3連戦という死闘の連続で決勝まで上がっていった、その経験と鉄の意志ある彼らに
余裕で分があった
としか言えない。
前大会の絶対的な経験値のあるなか、なんら危なげなくPK戦をクロアチアは制した。
◉日本代表のパイを考える
過去イチの戦力をもってしても、4試合に渡ると「誰が使えて誰が出せないか」がわかってくる。
これが重要な未来へのヒントだと感じる。
(この大会でだめだったから誰々使うな、というヒントではない。もっと想念の話)
結局信頼の置ける人材しか出せなくなってゆく、という短期決戦の総力のパイ。そのパイの大きさをこれからも上げてゆくことしかないし、面白いのは
その者のメンタルがどうか
大会仕様のメンタルか
に集約されそうだ、ということ。そして
それは大会で当てて
みないとわからない
という点。ここに強く深い要点があると考える。
今回も「初めてでブレイク」もあれば「初めてでうまくいかない」選手もいた。
で、それでいい、と考える。
わからん賭けをし続けるほかない、と私は考える。
もしかしたら堂安や三苫が前者で、上田やDF伊藤は後者だったかもしれない。谷口がステキな活躍を見せたことも嬉しい。久保は、と言うと肝心な所で(おそらくプレッシャーで)熱をだしたが、
それもまたしかたなし。
正負両極を担保し続けるべし
「化ける」かどうかは
当ててみないとわからない。
ということ。
それくらいW杯は特殊でありスリリングなのだ。
久保も凹まなくてイイ。
98年にブラジルのロナウドも、2018年にはコロンビアのハメスもノイローゼでダウンしている。
世界的プレイヤーでさえプレッシャーに押しつぶされるのがワールドカップ。「そんなもんだ」から久保選手も所属チームで励みばいいだけだ。
大切なことはW杯は「イチにハートに2にハート。その次にサッカー」という教訓で充分だろう。
で、そのハート面とサッカー面というふたつのサークルを大きく大きくしていくだけではないか。
怖さもある中、試すこと。信用すること。
「はじめて」「若手」を起用し続けることが総合的なパイの大きさにつながると私は考える。
それに今回、全選手が感じたはずだ。
足らない、ベスト8は近くて遠い、と。
悔しさは所属チームに持ち帰って精進するだけであり、その歴史が「今の選手が常に最強」となる。
4年後の日本代表は今年よりも、きっと強い。
◉Jリーグ、1年だけPK導入を
クロアチアとはPK戦だった。
これは2010年と同じでトーナメントには確実にあるものだ。イタリアのロベルトバッジオは
PKを外すことができるのは
蹴る勇気のある者だけだ
という美しい名言を残しています。
この言葉を、今回蹴った選手達に私は贈りたい。
・・がその「美しさ」とともに、やはり2010年と二回目なのでなんとか施策があっていいとも考える。
そこで!
Jリーグ、
1年だけ引き分けナシ。
PK戦、導入しませんか?
という荒療治を考える。Jリーグで90分後、引き分けならPK戦やりましょう!という提案。
PK耐性をつける目的だ。
PK職人はチームに一人はいるものだが、PK戦は5人要るので日本選手全体のPK技術・意識の向上と同時に、GK技術の向上を図れる。どうだろう?
90分勝利 勝ち点3
PK勝利 勝ち点2
PK負け 勝ち点1
90分負け 勝ち点0
もっとも、Jリーグは修羅のリーグなので「引き分けナシ・90分後PK戦あり」を導入すると、そのルールを「ハック」してそれ目的のチームも出てくるだろう。確実にリーグは混乱する(笑)が、
手をこまねくより
やったほうがよくない?
1年。1年だけ試して!
なんて想うよ。
悪くないアイデアだと想うし、こんな「フレキシブル・柔軟さ」をJリーグには求めたいね。
アジアカップなど、PK戦が怖くなくなるぞ?
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ベスト8には届かなかった。
清々しく散った今回の日本代表。
それは11月23日のドイツ戦から2週間も経たない行脚だった。が、なんと濃い時間だったろう。
本当に選手も皆さんもおつかれさまでした。
W杯はようやく「中入り」の休息日になり、私もホッとしている。面白くてカラダがもたない。
最後に。
森保氏の「続投」議論が高まる中、自身の感慨レターを書いて今回は終えようと想う。
それはまた追々アップします。では!
アップしました!