わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

True Tone 色の話

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いやーあぶない・・。
映像作家、映像ディレクター、そんなことをしていると「色味」に過敏です。


しかし、あろうことか、私のマスモニ(マスターモニター)のカラー構成がぶっ壊れてる。


ということが直近でありました。笑。
実は何度か経験していて(←なにが、あろうことか、だ!)その度に冷や汗になるんだけど、今回も試写前に気づいてよかったー。編集データはPCで編集後、最近はiPadにデータを映して視るんですよ。違う環境で試す、ということですが、そしたら・・




なにこれ・・

なんだ、この

見覚えのないトーンは・・





と。笑。

で、発覚してからが実は超めんどい
まずパニック&凹みですが(笑)、一通り騒いだらおちついて問題を切り分けないといけません。

PC「内部」のカラー設定なのか
モニター「そのもの」なのか?

たとえば「アドビRGB」というカラー設定を信じていても、そもそものモニターがずれていたら、元も子もないわけです。この切り分けがめんどいのですがとにかく、編集ソフト内で「見えてる」映像でデータが焼き付いてないのだから、犯人はモニター。
(もっとも「編集で見えてる通り」にデータが焼かれる事なんてないのですが、これはこれでまた別、コーディングの話になる)

今回は急いでいたこともあり、強引にモニター「そのもの」の設定を出力画に似せることにした。
要するに、ちからわざ。です。
そこでリファレンスとしたのが iPadIOSの「True Tone」という機能が見せる(みんながいつもみている)画面のことです。iPadで見える絵のように、マスモニを似せて設定し、急場をしのぎました。
そこにはiPadiPhone、そしてPCモニターを見比べてる私がいます、まるで小鳥のように。笑。

でも、これって合理的でもあり。
「正しい」色味というより、どのメディアのどの個体が多いのか? という考え方もあっていい。
メディアがWEBならPCモニターです。が、それこそモニターなんて星の数ほどあり、輝度もコントラストも様々。で、なにを基準とするか、さらにモニターそのものがあってんのか? という判断です。

しっかし今回はコントラスト色味ガンマ、ほとんど崩れててショックだった・・
慌てて過去作も見返したもん。今までの。
「い、意図通りにでてたのか!?」と・・。


◎自分だけが違うものを観る
本当に怖いのは、創り手そのヒトだけが、


ちがうものをみている


ということです。即ちこれを孤独と言う。笑。
だって、創り手その人の信じたものは、


ぜったいに書き出されてない


のだから。
それもそのモニターだけを見ていたら、そのヒト「だけ」一生気づかないわけだから。
これほど切ないことはない。が、これは人生にも置き換え可能だろう。自分の見て信じている風景は、本当にみんなが観ている風景だろうか?

なお、これと似た事件で、


撮影モニターが狂ってる


という「現場あるある」も余裕で経験済み。
今回きっちり獲れたんじゃないのー、と撮影終えホクホク家に戻り、素材を確認してみると



ほとんど飛んでんじゃん・・



という事件のことね。笑。
・・しかしこれもねー・・。
やった人は激しく肯くと思いますが、凹みきりますよ。だって現場はホクホク。あと地獄だもん。
撮影モニターが「暗く」それを「信じこむ」とこうなり、ケアレスミスの一つだが凹むよ。ホント。

それくらい、撮影・編集時の色味にはブービートラップがいっぱいだ。こういうときホトホト痛感するもんなんですよ。



◎ガンマ権はゆずらねえ
カラー。色。コントラスト。
ものすごく奥深い世界で語ればきりのない事だが、この機会に私の好みを書いておきます。と、



ガンマをゆずる気はねえ



と言えます。
ガンマとは光の通す量、というか、黒をどれだけ絞めるか、解放するのかその割合の値です。
これが意図と忠実であってほしい。なぜなら


ガンマこそ演出するデザイン


だと思うからです。むろんコントラストも色味もその「作品」を決める重要な要素です。
しかしガンマの値。
黒をどれだけ絞めるのか(光をどれだけ通すか)。これが物語の硬調・軟調をきめる最重要要素。
色とコントラストは譲っても最後まで抵抗したいのが「ガンマ」レベルだね、オレはね。
(だからこそ狂って出てると凹むわけだ。笑)

ガンマにこだわるのは少数派かもしれない。

大抵がコントラスト——むろん「コントラスト」というくらいで作品のテイスト・演出に大きく関わるが——、とにかく大抵がコントラストとカラーが大事、と答えるでしょう。彩度が重要ってのもわかる。
でもオレっちから言わせてもらうと、まっ先にガンマだ。作品の大元がそこで決まると考えるわ。
で、この値って「0.1」目盛がかわるだけで印象が転がる、ものすごく繊細なあたいなのです。
だからこそ大好き、ガンマ先生。ビバ、光!


で、あろうことかガンマの基準値。
マックとWindowsでは違うんですよ。笑。
テレビは基準がしっかりあるが、それでもテレビの個体によって余裕で全然転がるしねぇ。
(なおコントラストに至ってはTVの機種やモードで違いすぎるからもう、ある程度諦めるわな)
映像って本当は、わけわかんない所で「わかる」と言っているような所があるとは思っている。笑。


◎正しさとそれらしさ
聞いた話だとパナソニックのロゴ。
これはパナソニック社内に存在する、一台だけのマスターオブマスターモニターで透過してカラーチェックするんだってさ。合ってるロゴの青か?——と。でもこれって人間の「納得」という意味では合理的だ。もちろんカラー番号の指定などあるが、実際にどう「映るか」という点での力業だ。

一方で、創り手からすると「うーん!」と唸ったりジレンマを感じるときも当然在る。
先方が指定するカラー番号とストーリーとのギャップが生じる時がそれだ。これは「正しさ」と「それらしさ」との深遠な格闘の話だが、固い、役人さんにはわからないことかもしれず、甚だ淋しい。

「正しさ」とはそれはそれで迷信だと本当に思うのですよ。——なぜかって?
おもいでの写真ひとつ。
色味なんて狂ってるもんだ。
それを「ただしく?」色補正したところで、あなたの想い出は「いい」と言うのかい? ってこと。

ちなみにさっきのカラーとストーリーの話。
これは実話で、先方のレギュレーションカラーを(実は)外れたが、エキサイティングで敬意を保つ物語だったので「だれも気づかなかった」よ。試写をすんなり終えた。そんな取り越し苦労もある。笑

でもそういうものだし、心からそれでいいと本当に思います。今日はカラーの話でした。



【追記&補足】

loki.hatenablog.com