わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

TENET、もう終わりにしよう。

難解な二つの映画を紹介します。

話題作「TENET」。と
チャーリーカウフマン「もう終わりにしよう」

たまたま見たこの2作品が「難解」だったので、こういうだけの話かも知れないが。
まずは!


◎TENET

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さあ超話題作ですね。
こちらで「超話題作」というものが「いかに個人的に厄介な代物か」は書いています。


まあ上記ブログは置いといても。
しかし、やはりそれでも「超話題作」であり「避けては通れない大作」であったこともまた事実。
またこの映画は「踏み絵」でもある。
どう言うことかというと、制作国アメリカでもこのコロナの中、ボックスオフィスの再開第一弾大作という重要作。つまりそれ位、文化的社運のかかった映画でもあるわけです。(この難しい時期だからって)映画ファンでこれを見ないのか? という踏み絵ですよ。

それでもアメリカではNY州や加州などまだ映画館が解禁になってない、とも聞くが、とにかくノーランは例えば「ダークナイト」を当時北京五輪にぶつけています。その意味でも「熱く」敬意を払うべき映画作家だ。
今回はTENETをがっつりコロナにぶつけてきました。それもIMAX、大型機材を駆使し60ミリフィルムでガン撮りする、その心意気と映画愛になんの批判ができようか。

なお彼ノーランの映画の殆どを観ています。
(処女作「フォロウィング」が一番好き)

で「箸休めのない、全編イキった」監督であることも知り抜いている。正直言えば「疲れる」監督であり、去年「ジョーカー」が流行った時のように、本当に観に行くまでの腰は、正直、重かった。
しかし! その自信と人柱たるや、イチ映画ファンとして見届けぬわけにはいかぬ!!
で、観た! それもIMAXレーザーだっ!




「うん! よくわからん!」




笑。
しかしこの「難解さ」は注意が必要で、何種類にも「切り分け」なくてはならん、と思います。
切り分けないと、単純な「よくわからん」になってしまうからですが、私の言う「よくわからん」は



一周巡って、それでもやはり
第一声として「よくわからん!」



なのだ、ということにしておいてください。
おそらく一度観て「ふむふむなるほどねー」などと言う奴はそいつ自身嘘をついてるから。
それくらい難解だろうに、これ。で、ぶっちゃけ「Why?」もかなり多いです。それも初っ端から。
で、都合わるくなると「感じろ」というところにこの映画も世論もすり替わるわけだけど、そこも素直に肯けない。

事実、はじめの「今回の、ゲームのルール説明をします」的重要な研究所シーンで私はアウト。
言ってはいけない「Why?」が喉元に詰まる。いや、言っていいんだよ。まじで。
ギミックとしての弾薬が戻る重要シークエンス!
おお!


で?


となってしまったわ。
で、研究所レディは言うんだけどさ「考えるな感じろ」と。でもなぁ、よくわからんし、もろもろずるくね? と正直思うわ。え?そもそも銃構えるまでは「順行」じゃん。ん?ですよ


逆行による「エントロピーの減少」・・


ああ、だめだ、考えるだけ損だが。
エントロピー、とは本当に現代の最大の関心事の一つだと個人的には強く思うが(ここに注目している事自体ノーランさすがだと感じたが)、エントロピー・熱力学の逆行は、それこそが神の領域だろう。ビッグバンに関わる。

し、逆行組にはもろもろの矛盾点が予め、やはり組み込まれている(←褒めてない)。で、やはりそれはこの映画内でも解決してなくて、都合悪くなると「感じろ」なんだよ。うーん。そういう端々に私は「ずるさ」を注意深く捉えたよ。


娯楽超大作だからいい、と言えばいいのか?
大風呂敷広げたのはそっちだろ!つーさ。


わかるかな、この愛憎半ばする感覚を・・。とにかくその「山師」な魔術師的なノーランの「姿勢」には痛く感心するし勉強になる、とは言っておく。


ノーランは映画的な極めてヴィジョナリーな作家。彼の「映像体験」はそれだけで売りだ。
だからこそヒットメーカーの一人であり、ファンも多い。けれどそれは飽くまで情報にすぎない。
順行と逆行という「ギミック」・・これ自体が映像体験の最大の売りだが・・を大胆に無視した時、映画的構造は意外と単純だと思う。メタフィクションの箱で最大に楽しむべき映画であり、監督自身それを奨励している。し、彼が一番愉しんでいる。笑。それが悪いと言っていない!が、

ドラマがなぁ、・・なさ過ぎる

と私なんかは思ってしまう。
もっとも「好み」の問題だけどさ。もっと言うと押井守の映画に彼は似ていると思う。
押井守の主要作も「わっちゃか」と強烈な映像体験と理知的な、のっぴきならずシビれる知的バトルの末、最後は「手打ち」&「内輪もめ」なんだよね。押井守同様、ノーランもオリジナル企画になると「走りやすい」とも思うし。(ジョナサン・ノーランが脚本協力しなくなると、かね)

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Cernの地下実験

今回の理知的な知的エッセンスの数々も瞠目。
この映画自体、スイスのCern実験をもろに(問題点も含め)インスピレーションにしているとわかるし、見せかけのテロにはじまり、アルゴリズム=AI、エントロピー素粒子量子力学タックスヘイブン化する空港、金持ちレイヤーの渡り方、武器商人、インドとロシアなど本当にシャープなほど「今とこれから」が散りばめられている。(私は若干ミスキャスト気味かなと思いつつ)張り切ってらしたケネス・ブラナーの最後らへんの独白はもろ、現代支配層のアジェンダそのもの、と映った。
それら知的な記号に興奮、あるいは情報を再確認したし、これらの舞台ワードを愉しみ、同時に調べることもきっと大切なことに想うよ?
・・が故に、それだけにやはり「主語」を注意深く追ってしまうんだよなぁ、私なんかは・・。
それとダークナイトライジングでも散見したが、ノーランに限らず、だが、本当に白人の皆さんは



放射能、なめてる



と想うね。プルトニウムとかナニそんなカンタンに扱ってんの?とはフツーに想うよね。
これは広島長崎とフクシマ、三度も被爆した我々だからこその違和感に想うが、ホント、ノーランに限らず、ハリウッドは放射能描写が軽すぎだっての。


映像、物語、プロット、物語を語る手法、俳優、音楽、様々な要素が映画にはありますよね、当然。
で、色んなセクションに切り分けて語ることの出来る、実は、そういう意味で言葉がものすごく「多くなる」映画ですよね。だからスパッと「つまらん」と一刀両断できない魅力と実力にこの映画は満ちています。その意味で実に厄介です。

心情的には今回(も・・がつく。最近のノーランの傾向だ)「つっこみどころ」が多く、ついていけなかったなぁ。で、「ぷぷ、ついていけないってさ、ぷぷ!」が大キライなんですよ。
上記ブログにそのマインドは詳しく書いたけど「それでいいんだよ」っての。

一つ一つを取り上げるのは不毛であり、あまり意味もないことなのでしょう。
こういう「怪作」をしみじみ自分なりに捉えること・・今回で言えば「それでいいんだよ」とかさ、そういう思考の交感ができて、その意味で観てとても良かった。

以上、難解作には触れようね、パート1でした。


で。こっちの方がはるかに難解にして怪作

深彫ると読後の印象がかわる代表例としても「これ」ではないかな。



◎もう終わりにしよう。

チャーリーカウフマン監督作。NETFLIX制作。

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・・ここまででけっこう書いてしまいました。
なのでこの作品は急ぎます。

万人受けする作品ではもちろん、ありません


けれど、興味があればNETFLIXにあります。

怖いもの見たさで、観てみては?




で、その際ですが「わからなかった」と思う。

私も「ほえ?」でしたよ。難解です。



その際!「今回に限っては」、いろいろな考察や解説がYouTubeなどにあります。
見終わった後、そういった解説で自身の映画体験を補足することを強くオススメします。

きっと読後感がかわるでしょう。

私も二度観た後、解説に触れて、私なりの想念を新たにしましたから。

いい映画ですよ。
いい、というか、とてもとても●しい映画です。



難解なものにふれる。「わからない」をそのまま触れて見る。時には、こらえてみる。
それも映画の魅力のひとつ。豊かさですよね。
テネットではあーだこーだ言いましたが、全てが「わかり易い」だけのものも味気ないでしょう。

そんな二作でした。
秋の夜長です。 では!






【追記】
1年前「エントロピー」が最後にでてくるメモ程度の記事。でもこれね、ホントに怖い用語なんだよ

loki.hatenablog.com