「そうか・・今日から連休か・・」
私は、ハッとした。
遠い目をするくらい暦とかけ離れていることに。
そんな土曜日の昼下がり。
私は煙草を買いに、タバコ屋さんに出かけた。
ご姉妹でやられているそのタバコ屋の(お年を召した)妹さんが私を見るなり、目を輝かせた。
「この前集めてた空箱。お礼が届いてますよ」
そう言うと包みを見せてくれた。
「マグカップですよ」
恥ずかしながら、私は拝受した。
アメリカンスピリットの空箱を5つ渡すと小さなライターがもらえる。
そんなキャンペーンをそのタバコ屋さんは行っていた。先月の話だ。
私はせっせと、あほみたいに、ただゴミ箱にさえ届かなかった、それ以外の理由があろうはずもない散乱する空箱群をかき集めてはせっせと、購入のたびにもっていっていた。
なぜならそこに、たんまりあるからだ。
ほんとうにあほみたいな勤勉さで、せっせと持っていっていた。それでミニライターをもらっては
「ラッキー」
などとささやかだがセコすぎる悦びに浸っていたのだ。いや、そのキャンペーンがおしまいになり、甚だ残念だとさえ思っていたくらいだ。
そうしたら今日、それらの空箱たちはギフトラップに包まれたマグカップにかわったのだった。
それもメッセージつきで。
担当河中さんはものすごくいい人である。
逢ったことはない。
しかしとびきりの美人であることもまず間違いないであろう(←むろんだ。まず心が佳人なのだ)。
ああ・・、これはギフトである。
ギフトとは「嬉しいおどろき」のことを言う。
そしてギフトとは、心を詰め込むものだ。
どっちの心か? それはこっちだろう。
これが販促のためのやり方であろうと、私はハッとしたのだ。そしてそのことだけで充分ではないか。
こうして珈琲を飲むためのマグカップが、一つ我が家にふえたのだった。