わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

ヘイトフル・エイトは困る映画

タランティーノの「ヘイトフル・エイト」
 
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観たのが木曜日なんで少し経つが、たいへん困る映画だ。
噂もとんと聞こえてこなかったからある程度覚悟してたんだけど、観ると「なるほど(噂にならないわけだ)」と思う。タランティーノは本当に大好きだがひと言で言うと「ひたすら長すぎる」作品です。
 
こういう時に頼りになる町山さんでさえ、この評論には料金〔200円〕取るくらいだから本国でも戸惑った作品のようだ。よって、彼の考えを借りずに3日経ったアタマで考えてみようと思う。
 
「雪」「南北戦争直後」「犯罪組織のボス(女)を護送中」「黒人」
「メキシコ人」「ハングマン」「執行人」「リンカーンの手紙」ーー
 
映画のキーワードを追うとおそらく、いまのアメリカを言っているのではないか?と推理できる。
しかし、それ以上がなんとなくしかわからない。
この映画のカート・ラッセルは執拗に自分のライフルで他の侵入者たちを威嚇し、とにかく信用しない。その外交の数々がこの映画のメインだが、彼にこめた要素は、『白人系リバタリアン』だろうと思う。
で、リンカーン大統領の手紙をもつ黒人S・L・ジャクソンはまさにオバマの比喩』にちがいない。
彼らは南北戦争で勝った北軍側であり、新しい町に向かっている。
賞金首を保安官&死刑執行人に手渡して金にありつくためだ。 そんな風に紐解くと、この映画でなんでメキシコ系が必要かわかってくる。 で、
 
【このあとネタバレ注意!観る予定の人は読まなくてぜんぜんOK!】
 
で、大事なことは、誰も「新しい町」に辿り着けないってこと!
タランティーノは「桃源郷」が大好きだ。
(それは「エル・レイ」のあるトゥルーロマンスで実証済みだね)
この映画のクライマックスに、S・L・ジャクソンが「どこ」に一発もらうか、ということも、彼がオバマであると仮定すると、余計にバカバカしくて、ナイスだ。 仮定しなくてもウケるんだけど。
オープニングでは、長いワンカットで(ちなみに美術は種田氏)キリストの木像がうつるが、これも米国人ならもっと身近にわかるんだろう。 もしかしたら「キリスト原理主義」を指しているのかも知れない。
 
実はタランティーノファンからすると、これら全て、というか「ヘイトフル・エイト」全体が、以前からよく出てくる要素で構成されている。だから、新鮮味に欠けてしまった、とも言えるはずだ。
でも彼にとって念願の、エンニオ・モリコーネとの作業は素晴らしかったろうし、肝心なメインを張るカート・ラッセルが正直ミス・キャストであれ、それも彼の本望なんだから仕方ないと思うのだ。(ちなみに、オレも本当に大好きだ、カートラッセル!その、引き出しづらさも含めてよくわかるぜ!!)
ボロッボロのなか最後に読み上げる手紙は、いつものタランティーノ節ですごく良いワンカットだし。
その、はかなくも、ほのかに薫る、希望のようなもの。 好きだねー
しかしまじで、長い。 長いしフツウに裁けば「面白くない。なにこの冗長さ?」。そんな映画なんだ
 
でも繰り返すが、政治的なメタファーは確実に匂う。
だから、そのパズルを読み解くのもひとつさ