わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

ふたつの「天使たちのシーン」

時の洗礼ほど、強烈なモノはない。
先月「さらば、あぶない刑事」を見たときもそう思った。
あの「チャラさ」も何十年と積み重ねることで、とんでもない迫力として提示される。
(誉めています。)
 
先日も、ラジオを聴いていて感じ、ギョッとした。
火曜日のはなし。ラヂコでJ-Waveの「Hanging-Out」という番組を聴いていたところ、
小沢健二天使たちのシーン(1993)がフル尺(13分)で流れたのだった。
 
81srKy+08pL._SL1380_.jpg  長文になりました
 
 
2016年に聴く、それも公共の電波に乗った小沢健二の「天使たちのシーン」は格別の味だった。
完全に当時をその時代ごと瞬間冷凍したような、この長い楽曲は、時の洗礼によって豊かに熟成されたことに、あの番組を聴いていた誰もが気づいたことだろう。
今ではもう、すっかりこの曲「天使たちのシーン」は名曲として誉れ高いが、発売当初はアルバムの中の、一つのたんなるイイ曲という認識だけだった。 いや。そのはずだよ。
しかし「いい曲だ」という記憶は誰もが補完していた、ここが大事だと想う。みんな、この曲の重要さに「気づいて」拡散していた、当時から。その共有するキモチが何よりステキだったように想う。

そしてこの時の洗礼は、当時の「渋谷系オザケン」というレッテルの殻をやさしく流し去り、まさに「普遍的」といえる迫力と空気を、この13分に纏わせた。いやもはや、13分でさえ、足りない
まだ聴いたことのない人いらっしゃれば、
短尺Edit版ですが、ココにあります。 とてもいい曲です。


「あーいすべーきー♪ うまれ〜て そだぁってく サークルぅー♪」
脳内ループがとまらなくなり、この曲は 大槻ケンヂ がカヴァーしていたな……
と思いだし、ネットではニコニコ動画にあったので、聴いたのだった。
今日の主眼はここです!

41P1PCVJNHL.jpg

正直に言って、2度目に聴いて、泣いたねえ。 大槻ケンヂ版・・・。
ホント。 泣けたなぁ・・・・・・。

えええ? まじで? という人こそ、続きを読んで欲しい。 (あと、ニコ動もぜひ見て)
一度目はいわゆる「コメント表示」つきで見た。 それはそれで色々な葛藤が見えていい。
で、ただならぬものを感じ、「コメント」を落として聴いてみよう、と二度目を流したのだ。
この話をしたい。 しかしその感動の内訳を述べる前に言っておくことがある。
いわゆる、ヴォーカルにおける表現法のちがいについてだ。 それは、


謳いあげるべきか、
訥々と言葉をおくべきか
ということ。


41P1PCVJNHL.jpg 81srKy+08pL._SL1380_.jpg

演技でもそうだが、本人が歌い上げることによって観客が逆に白けちゃう場合はよくある。
むしろ淡々と歌うほうが、聴衆の脳内で培養され残るのだ、とする考えは、一つの真実だ。
しかし音楽たる楽曲はすべて、ユーミンYMOのように淡々と歌うべきなのだろうか?
ここに個人の態度やセンス、古今東西の歴史もでる。

オリジナルシンガー、小沢健二は訥々と置いていく。 だからこそ、広く愛されてもいる。
一方、この楽曲をカヴァーした大槻ケンヂは、のっけから歌い上げる。
オリジナルに親しんでいると間違いなく怯むし、ハッスルカラオケのようにも聞こえるだろう。
しかし、それだけでは10分以上保たないのが、この曲のいいところなのだ。
その個人がもちうる裸の「よろこび」と「哀しみ」 がちゃんとないと、この曲はとても保たない。
大槻ケンヂはしっかりとその「哀しみ」を離さなかった。 だから2度目にちゃんと聴こうと思った。

泣いたねえ・・・
なにが泣けるって

「おれたち、良い物は素直にいいって言うよ」(たとえ渋谷系でなくとも)

そう、
讃える態度だ。 それもバンドを挙げて。
何度聞いても泣ける箇所が5分すぎにある。



冷たい夜を過ごす 暖かな火をともそう
暗い道を歩く 明るい光をつけよう ギター!



ここは、オリジナルに本当に勝っている、と断言する。
なぜなら(モテる)オザケンより、
オーケンたちの生活の方が「冷たい夜」がはるかに冷たいからだ。

暗い道は、より暗かったろう。
だからこそ余計に、こみあげてくる。ピアノとギターも最高に泣ける。
傍目に愚かであればあるほど、魂がアーバンソウルでなくメタルであればあるほど、つき刺さる。
そこでヴォーカル法のメソッドやちがいなんて、……くそすぎる。
これも「天使たちのシーン」なのだ。




ちなみにオリジナルの小沢健二本人でさえ、ドラムを担当した青木達之の支えがなかったら、この曲はできなかった、と告白している。 この意味はとてつもなくでかい。
あらためて繰り返すが、オリジナルの素晴らしさは疑いようがない。
小沢健二のこの楽曲がなんでモンスターなのか?
それは、この、さいごの歌詞に尽きるだろう。


神様を 信じる強さを僕に
生きることを あきらめてしまわぬように


ここにグッとくる人、心洗われる人は数知れない。
この曲をオザケンが発表してくれなかったら、Super Butter Dogの「サヨナラCOLOR」も、キリンジの「エイリアンズ」もなかったかもしれない。 勝手すぎる憶測だが、そんな因果すら感じてしまう。
そして時を経たからこそ、だが、亡き青木達之のドラムにより深い味わいを感じてしまうし、あるいは……、そうだね、今日は311で。 偶然だけれどそれも含めて、今日という日にふさわしく、祈りの曲なんだ。


ここまで読んでくれてどうもありがとう
さあ、当分脳内ループが切れるまで 脳内に流しておこうと想う
カモン!