わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

自意識と成功体験

「神は細部に宿る」。
もうこの言葉ばかりに最近ぶち当たっていると思う。

 
それはとっても、怖いこととして。自意識というやつは、細部にあらわれる。
それは「意識」だけでなくそのヒトの背景、知識、知性、考え方、性格などを立ち所に示唆するから。怖すぎる。(だからこそ、奥深く、愉しいのかもしれません。)
 
ヤッパリマン」というトピックで日本語「やっぱり」「やっぱ」は危険な言葉だと言いました。常用して口癖になると自分自身をバインドしてしまう危険があるからです。また自分をまもる、被害者のワードである、と書きました。
 
最近その持論を開陳する瞬間がありました。ごくごくプライベートなちょっとした会話の中でした。話している相手が、自分は臆病になってしまう、なんでなんだろうと悩んでいる様子でした。
そこで彼の「やっぱ」の多用を指摘した時、「たしかに言ってます、ああ!、わかった気がします!」ととても喜んでくれました。その喜んだ姿にボクも嬉しくなり、ああ、言ってよかったなぁがんばってほしいなぁ、と思ったのでした。
 
 
で、人のためになったよーん!と嬉しくなってる自分を想うわけです。
 
 
うわ、こわい。 捨てがたいけれど、気をつけねば、と・・。(だから、自慢としての記事ではありません)これも一つの、ささやかだが「成功体験」になりえるからです。成功体験ってくり返されることがあります。そして繰り返すほど、感動は薄れていくものだからです。


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※写真はイメージです


 
たとえば。
すべてのレストランの、全てのメニューには「成功体験」が書かれています。
ランチにはA定食からC定食まであって、それはそのお店の「これ出しゃまちがいない」でしょう。経済活動上、お店のオートメーションを考えれば理に適っています。が、あくまで例え話として。
 
とにかくそれは、店主の「こ、こっ、これがダメなら店たたむ!」という一皿ではないのです。もしそんな一皿があったら、心臓が飛び出るほど、店主も客も、怖いわけですよね。店主も、そんな一皿をだすのなら、出すべきお客のコトを考えたくなるかもしれません。
 
ここに千差万別の価値観がでます。
考え方、客をどう想っているかという態度がでます。ここに「値段」という、共通の価値観を客人に要求する店もあるでしょう。(それがフツウか。)
もしかしたら、店主は相当ロマンチックなマニアで、相手は不問だ、次入ってきた客にだす!なんてヒトもいるかもしれません。ここに、どう拒絶したいか、というヒトそれぞれのプリセットがある。
そして自分以外の他人を、ひいては世界を、どう捉えているかも出ると思うのです。
 


店主 「いらっしゃい」
 

 

成功体験(定番メニュー)に頼るというのは、とりあえず間違いないから喰っとけってことです。上意下達でありながら店主・客双方にとって、安住の地です。
誰も傷つかない。しかしながら「うめー!」はあっても込み入った感動もないかもしれない。少なくとも、客人を看ての味付けはなさそうです。経済の論理をだすと、さらに難しいものとなります。

そうかと言ってひたすら「俺の一皿」にこだわっても、そこに座る客を、見ようとしないことになります。それは冒頭で言った、自意識にすぐくっつくからです。
「俺の一皿」は強烈なエゴとファンが必要です。捨てがたいですが即興性と許容度に貧しく、「おうおぅ!この味がわからねえのかい」に転じます。

しかし。しかしです、本当の、「これがダメなら店たたむ!」一皿には相手がどうしても要る。
長い、地道な研究も。単なる「俺の」一皿とはちがうのです。(だからメニューにないわけだが)
 


店主 「いらっしゃい(ところでお客さん、いま、どんな気分?)」
 

 
 
店主のひとことにも、メニューにも、その紙の材質にも、店構えにも、雰囲気にも。
細部に神は宿る。
如才ない(きのきいてる)お店に入ると嬉しいものです。きまってそんな店はなに頼んでもおいしい。対して、用意のない店や、わかってない店、高飛車な店は一刻も早く出たいと感じるものです。
 
 
むろんお店とは、あなたのことであり、ボクのことです。
これはコミュニケーションの話です。
 
 
なぜこの話をしたかというと「相手」がどれほど大事か、あらためて最近強く想うからです。それはどっちが客で店かではなく、双方が看板背負いつつも相手のまえで正直で容れるか、ということ。
また最近、負けないヒトが多すぎるとも思うからです。(←「負けないヒト」の説明はまたの機会に)
A定食と渾身の一皿のあいだの、うわ辺でも深刻すぎもしない、シックリくる皿がボクは大好きだ。



追伸
ひとつのラーメンを作るのに、安岡力也と山崎努は殴り合いのケンカをしました。
ああ・・。伊丹十三の「たんぽぽ」が見たくなってきた・・・