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わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

資本主義以後の世界を読んで

感想・評論
中谷巌著「資本主義以後の世界」(2012/徳間書店
 
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ブックオフで購入。拝読。 これは、とてもいい本だ。
資本主義の成り立ちを1492年コロンブスによるアメリカ大陸発見から俯瞰してみせる。
時の覇者スペイン・ポルトガルには「何が足りなくて」オランダでは「どうなって」、大英帝国に遷るのか。産業革命がなぜ英国でおこり、その後どうなってアメリカが覇権を担うのか。すべて俯瞰する。
その俯瞰も第2章までで、この本は第8章まであり、実に多岐にわたり、世界と日本を読み解く。読者は時空を旅しながら資本主義と民主主義の「成分」を理解し、現在、なにが問題なのかを把握する。 概論。 超マクロな視点。
 
だからミクロの顕微鏡的な「つっこみ」は読者の数だけあると思う。しかし、この著者が編んだ知性(この本自体、様々な引用で綴られる)はボクのような人間にも届く。
考えるべきトピックの連続であり、何度でもメンテナンスすべき、かつドストライク時代を突いている本だ。
 
 
内容が多岐にわたるので、感想を一言で表すのは難しい。
が、平たく言えば、「グローバル資本主義とアメリカの覇権は、じきに終わるよ」と、この本は言っている。読書中も読後も様々なことを思い描くが、読後のとくに「コレ」という感想を挙げるなら、
 
 
「この世界はマインドコントロール合戦だ」
 
 
ということを強く、思い直す。 加えるなら、その様相はとんでもなく面白い。今という時代を生きるのは本当に面白いと感じる。
五〇〇年続いた資本主義の継体がサクセション(遷移)するかしないかの瀬戸際を生きているのだから。今まで考えていた、気にしていたパースが一気につながる。
たとえば、どうして今「すき家のワンオペ」が騒がれるのか? なぜ「ヤンキー社会」と騒がれるのか? むろん「原発」や「TPP」のいったい何か問題なのか? そういった生活のパースがすべて繋がってくる。スティーブジョブスも「ウルフ・オブ・ウォールストリート」もDRONEもギリシャ危機もW杯も繋がっている。
もっと言うと、多くの人がどうして昔を懐かしむのか? も感覚ではなく、体系から理解できるようになる。
 
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M・スコセッシ監督作「Wolf Of Wallstreet」(2013)。 略して「WOW」
ソリューションのないゲスなクソ映画だが、これは「ゲスなクソ映画」でなければならなかった、ともいえる
(スコセッシの透けてくる「若作り」もふくめ、アメリカを象徴した映画のひとつ)
 
ボクのセンチな世代論を少し披露すると、この「失われた二〇年」をガッチリ20代と30代として送っている。だからボクやベビーブーマーの人々はその数だけ、自身の中にこの二〇年に思い入れがある、と思う。
十代のころに思い描いた20世紀型、あるいは昭和型やアメカジ型の「あこがれ」が気づけばすっかり土台ごとなくなっていく様を見てきた世代であり、その「手応え」はとくにこの本を読む純度を上げるものと思う。 同時に、その20世紀型であれ昭和型であれ、それらはタイムリミットに満ちた幻想で、いま、主流のグローバリズムもまた幻想にすぎないはずだ、と皆、気づきながらの、いまこの本!、なんだから。
 
むろん幻想はいつの時代にもあり、多くの人は個人が置く刺激なしで生きていくことは難しい。だからこそ「この世界はマインドコントロール合戦だ」という感慨に戻る。
 
では幻想ではないもの、ってなにか?
そこを今一度、しっかり思い出そう。準備していこう。この本の最後の章はその一点に注がれている。 いい本ですよ。
 
最後に。 超マクロ本なので、ミクロの顕微鏡的にはいろいろある。ボクも同意しきれない部分はある。 いいたいことはわかるけどさ、という壁も組織の数だけあるはず。
(あくまで「組織」の数だけ、ね。 この本の真意はそこで退くべきではないよ、という立場にある)
現実主義者には絵空事かもしれない。 これは日本語による日本への至言な分、外資系の人はつらく、耳を塞ぎたいかもしれない。 この本がいいのは、自分がどれだけ「どんな思想に浸かっているか」が点検できることにある。 実にためになり、意識の幅を広げるよき指導書に間違いない。
ボクは返すがら、エマニュエル・トッドの「帝国以後」(2002)を読み出している。
 
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参照: 過去のこのテーマの記事 【永劫回帰という呪文】 (って、このテーマばかり書いているけれど)