わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

嫉妬する女性映画たち

アメリカの女性映画。 それも南部や中部といった、極力田舎で小さな町。
それもキリスト教の色濃い、静かな映画。


うまく言えないがこのライン、実は大好きなのだ。
そしてこういう映画にこそ嫉妬してしまう。 自分にたりない眼差しの豊かさを感じ、「ああ、こんな映画が作れたらなあ・・・」と思うのです。
(もちろん男臭ーいラインも大・大好きなのだがねっ!ちがうんだ、眼差しが・・・)
今日はそんな素敵なアメリカの女性映画を3作ピックアップします。
どれも男性によるオリジナル脚本です。ああ。こんな映画、ホント作ってみたい。


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ユー・キャン・カウント・オン・ミー(2000)
監督・脚本:ケネス・ロナーガン
出演:ローラ・リニー マーク・ラファロ ロリー・カルキン

この特集を思いついたのは、この映画を最近観たからでした。
カネを借りに実家に戻る弟と、シングルマザーの姉とその息子の共同生活がはじまり、終わるまでの物語。 なんたってとっかかりが素敵すぎる。
カネを借りに帰ってくる弟。以上! サイコーな始まりじゃないか! 物語の「欲求」がすべて日常にあふれていて、みんなヒーローではない。 その人間味が静かにクル。
ラスト、バスを待つベンチでの姉弟の演技。ここでマーク・ラファロは極上の「即興」を披露してくれてます。

この原題まるごとな邦題でも分かるとおり、未発表のビデオスルー。もったいない。
あまり知られていないが、女性なら共感すること270%だ。
舞台はインディアナ州スコッツビル。



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この森で、天使はバスを降りた(1996)
監督・脚本:リー・デヴィッド・ズロトフ
出演:アリソン・エリオット エレン・バースティン マーシャ・ゲイ・ハーデン

原題「The Spitfire Grill」。邦題の方がステキ、という希有な例でもあります。
(が、「スピットファイア」が戦闘機ということはこの映画では大切な暗喩です。)
この作品が今回の、嫉妬系女性映画の筆頭でもあります。 どうしたらこんな映画が作れるだろう?

この特集のために見返して、改めて素敵な映画だった。
レストランにやってくる訳ありの女性パーシー。その店のオーナー・ハナ、それに甥の妻シェルビー。3人の女性の物語。 以上。 あとは観て下さい。
舞台はメイン州ギリアドという町。



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プレイス・イン・ザ・ハート(1984)
監督・脚本:ロバート・ベンソン
出演:サリー・フィールド ダニー・クローバー J・マルコビッチ

これもねぇ。 いいんだよなぁ。
夫の突然の死で、生活の嵐にたくましく立ち向かう婦人と綿農園の物語。
ラストのワンカットが超絶ベスト。久しく観ていませんが、まざまざと残っています。
オスカーも獲った有名な作品ですが、そんなハクがなくとも、とってもいい。




こうして並べると、父権の喪失が3作ともにあることに気づきます。
思い描いた「成功物語」から外れたとき、女性はなにをするのでしょうか?
そのことを3作とも、ユーモラスに、たくましく、描いています。

そもそものハナシ。
映画に限らずですが、


女性の方が背負っている(/失う)モノが多く、
ただでさえドラマチックなのだ。 


と。実はそう考えている自分(♂)がいます。
だからこそ、そんな女性の立体化に成功した映画たちに、嫉妬してしまうのです。
それにアメリカ中央・南西部特有のしなやかな信心深さへの嫉妬、という側面も、もちろんあります。

あなたのオススメ女性映画はなんですか?






Gloria_Gena-Rowlands.jpgALICE DOESN'T LIVE HERE ANYMORE.jpg

筆者注)
なおカサヴェテス「グロリア」とM・スコセッシ「アリスの恋」は今回除外しました。
これらもむろん、女性映画の傑作ですがあまりに男臭いのでね!
それに都会っぽく静けさもないので(笑)。 この2作についてはまたの機会に