わが心のBlog

by Hiroki Utsunomiya

天使のスコップ

今日は南関東で初雪。
もうそのことで今日は話題独占なほど、南関東のヒトって雪が珍しく、好きなんだね。
ボクも横浜育ちなんで、もちろん北国の厳しさはわからないのだが。

出る理由をそもそもなくし、いつもより静寂な雪景色。 とおくクルマの音もしない。
ああ作業がはかどるなぁ。
珈琲をすすりながら明日提出の仕事をしていたら、白い雪はまだ降っている。


ああ美しいなぁ。 ああ……



・・・・・・。



や、止まないな・・・。
まずいな・・・ 雪かきしないとじゃないか・・・・・・




ボクの住む今はなき祖母の家はせまい側道の角に面している。
道の奥には近隣に住む方々の駐車場などあり、意外とクルマの出入りが多くも狭い舗道なのだ。
明日の朝、この角っこのイエの雪が積もってたらどうするんだ……ブーイングではないのか……。



おそらくみなさんの出勤時間にオレは起きちゃいまい……
であれば、今やるしかない…… それに雪が柔らかいうちにやらねば……
オレの他に誰が居よう………



意を決したオレはスコップを手に吹き荒む嵐の中(←大げさ)、オモテに出る!
♪ゆきーの神軍 こおりを踏んで!
心の中で「八甲田山」の軍歌が流れるなか、雪をかきわける!!
ガリガリガリ! シャー! ガリガリガリ!
シャー! ガリガリガリ!





ひ、日が暮れる・・・これ・・・





ドヤリングしたいわけでも決してなく、意外と角のL字の面積が広い。
ぐわー。 この量……。なにオレ、すべてやんの? と、隣の方は……? ハ、ハニャー……

ゆきーの進軍! こおりをふんで!

ガリガリガリ! シャー! ガリガリガリ!
シャー! ガリガリガリ! シャー! ガリガリガリ!








「こんにちは」








まだ声変わりしていない男の子の声がする。 近くに住む、伊藤くん(9)だった。


男の子 「ずっとやってましたよね」

オレ  「いや、さっきだよ」

男の子 「え、でも、やってました」


小さな男の子の手にはスコップ。
そして赤いリュックサックを背負っていた。 おそらく外から帰ったままの格好で来たのだ。


いいですか、みなさん。
この世には天使がいる。 スコップとリュックサックを背負って、天使は現れるんだ。
伊藤君は自分なりに、そのスコップで雪を掻きだし始めた。
きっとすぐに飽きるだろう。チカラもそこまでなさそうだ。 しかしそのことがなんであろうか?
雪を丸め、男の子に投げてみた。 すると彼はキャッキャと喜んだ。

 

オレ  「リュック、いいのか? 濡れちゃってるよ」

男の子 「いいんです」

オレ  「そうだ伊藤くん、チョコいるか、チョコ?」

男の子 「え……。 どっちでもいいです」

オレ  「そっか、どっちでもいいか…… じゃ、いっか?」

男の子 「はい」

 

 

いわゆる、しっくりくる時間は終わりに近づいていた。 案の定、彼は雪の量に弄びだす。
伊藤くんは良きところで帰し、そのかわり、彼が持つデカく上等なスコップを、借りることにした。

男の子 「あ。 おわったら玄関に置いておいてください」

 

わかった。 そうしよう。
引き続き、黙々と天使のスコップを手に雪かきをした。
すると音が違うんだろうな。
近隣の方々も徐々に軒先に現れ手伝ってくれた。 感謝もされた。 とんでもない。
あのモーメントに比べれば、雪かきなんてどうってことないはずだ。 そうだろう?




今日は雪の中に天使が現れたってはなしだ。